バイデン米政権、重要・新興技術の標準化に関する国家戦略を公表

(米国)

ニューヨーク発

2023年05月09日

米国のバイデン政権は5月4日、「重要・新興技術(CET)の標準化に関する国家戦略PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」(以下、戦略)を公表した。合わせて要旨をまとめたファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますも公表している。

政権は戦略の冒頭で、CETの標準策定への関与は米国の経済および国家安全保障を強化するとし、これまでの数十年において米国は有志国とともに国際標準の策定でリーダーシップを発揮してきたと経緯を振り返った。しかし、今日においてはその試みが中国をはじめとする戦略的競争相手による挑戦を受けている、と問題提起をしている。特にCETについて、その軍産複合政策および独裁的な目的のために、平等な競争市場を自らに有利となるよう歪曲(わいきょく)させ、自由な情報の流通を妨げ他国での技術革新を停滞させていると懸念を示した。

戦略では、優先対象とするCETの分野として、通信・ネットワーク技術、半導体、人工知能(AI)・機械学習、バイオテクノロジー、測位・航法・タイミング(PNT)サービス、デジタルアイデンティティーのインフラおよび分散台帳技術、クリーンエネルギー発電と蓄電、量子情報技術の8分野を挙げている。さらに、世界経済と国家安全保障に影響を与え得るとして、自動化・接続されたインフラ、バイオバンキング(注)、自動化・接続・電化された輸送手段、重要鉱物サプライチェーン、サイバーセキュリティとプライバシー、炭素回収・除去・利用・貯留の6分野も挙げている。バイデン政権はこれらの分野の国際標準策定において、民間分野とともに標準化機関(SDO)に関与していくことを前提としつつ、次の4点に注力していくとしている。

  1. 投資:技術革新を促進する標準化前の研究開発への投資を強化する。民間、学界に標準化のための長期的な投資を呼びかける。
  2. 参画:国内外を問わず、民間や学界その他の幅広い利害関係者に関与し、標準化のための活動における米国の参画を推進する。
  3. 労働力:標準化に関わる米国人材を増やすために、学界や中小企業を含めた産業界、市民社会の関係者に教育・訓練の機会を提供する。
  4. 統合性と包摂性:同盟・有志国とともに、世界中の国々が参加でき包摂的な成長を実現できるよう、国際標準が公平な過程で技術的なメリットに基づいて確立されるべく、国際標準システムの統合性を促進する。

なお、今回の戦略は、政権が公表済みの「国家安全保障戦略」(2022年10月13日記事参照)、「国家サイバーセキュリティ戦略」(2023年3月14日記事参照)、および米国規格協会(ANSI)による「米国標準戦略PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」と連動するものだとしている。

(注)血液や細胞など生体サンプルの収集、保管、利用を指す。

(磯部真一)

(米国)

ビジネス短信 bb9843a760ef79a9