米サンフランシスコ市計画委員会、市内中心部の空きスペース対策の条例承認

(米国)

サンフランシスコ発

2023年05月18日

米国サンフランシスコ市計画委員会は5月4日、ロンドン・ブリード市長らが提案した市内中心部とユニオン・スクエアで多様なビジネスや活動を促進し、空きスペース対策を支援する条例について全会一致で承認したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

同条例は、中心部の商業施設を住宅に変換することを通じて、住宅増加を促しつつも、サンフランシスコに集中する雇用を支える企業に十分なオフィススペースを確保することを目的としている。そのため、条例では市の計画・建築基準を改正し、既存のオフィスビルを住宅に転換するための承認プロセスや要件を簡素化した上で、ユニオン・スクエアと中心部全体で、より多様なビジネスや活動を可能にするために制限を撤廃する。また、ユニオン・スクエアで多様かつ新たな用途や活動を一層可能にするために、ユニオン・スクエア内にさらなる柔軟性を与える地域を設ける。条例に先立ち、ブリード市長は2023年2月、サンフランシスコ中心部の未来のロードマップを発表していた。ロードマップでは、主な9つの戦略の1つに「建物の新しい用途と柔軟性の促進」を掲げており、同条例はこの戦略の重要なステップとされている。

非営利団体シュプール(SPUR)が2023年3月に発表した調査レポートによると、2022年末時点で市中心部のオフィススペースの空室率は約28%、賃貸契約されていない総面積は2,300万平方フィート(約213万平方メートル)に上る。また、今後、賃貸契約が満了してテナントが拠点の面積を縮小するため、オフィス空室率は2026年まで高水準で推移すると予想されている。一方、現在賃貸されていないスペースの40%を物理的に住宅に転換できれば、1万1,235戸が増えるという。

空室率の高止まりは、中心部の小売店閉鎖の動きにも表れている。複数のメディアによると、ユニオン・スクエアに所在していた大手通信会社ティーモバイルの旗艦店(約1,579平方メートル)が2023年に入って閉鎖したほか、大手百貨店サックス・フィフス・アベニューのオフプライス・ストア(注)のサックス・オフ・フィフスが2023年秋、大手オフィス用品店のオフィスデポは今後、閉鎖予定と報道されている。ほかにも、米国大手百貨店ノードストロームが中心部の関連2店舗を2023年夏までに閉鎖予定とされる(2023年5月9日記事参照)。

(注)企業やブランドの余剰在庫を仕入れ、低価格で販売する小売店。

(石橋裕貴)

(米国)

ビジネス短信 b2989e2426d632d9