WIIW春季経済予測、中・東欧の経済成長はユーロ圏を上回る

(中・東欧、西バルカン、ロシア、ウクライナ、オーストリア)

ウィーン発

2023年05月10日

ウィーン比較経済研究所(WIIW)は4月26日、中・東欧と西バルカン諸国の春季経済予測を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ほとんどの国は、ロシアのウクライナ侵攻(2022年2月)による経済的打撃を乗り越えた。経済活動は新型コロナ禍後の回復需要の影響があった2022年より著しく減速するものの、2023年のGDP成長率はハンガリー以外の国でプラス成長になる見通しだ(添付資料表参照)。同予測の首席担当者であるオリガ・ピンデュク研究員は「最悪のシナリオは実現しなかった。企業と家計を悩ませる消費者物価上昇率は依然として高いが、景況感が穏やかに改善している。その要因の1つは、ユーロ圏とその最大経済国であるドイツにおいて、回復の兆しが見えてきたことだ」と述べた。

2023年の中・東欧のEU加盟11カ国の平均経済成長率(予測)は1.2%で、EUを0.5ポイント、ユーロ圏を0.7ポイント上回る。南東欧のEU加盟国(ルーマニア3.0%、クロアチア2.5%、ブルガリア1.7%)はビシェグラード4カ国(平均0.6%、注1)より回復力を発揮している。西バルカン諸国は平均2.0%で、特にコソボ(3.6%)、アルバニア(3.3%)、モンテネグロ(2.9%)の成長率が高い。

中・東欧で経済が改善しつつあるものの、大きな下振れリスクが残る。ピンデュク氏は、各国の金融政策の大幅な引き締めの結果、回復が停滞し、経済状況が悪化する恐れがあると指摘。また、戦術的核兵器の使用によってウクライナにおける戦争がさらに悪化する可能性がないとは言えないと同氏は述べた。さらに、2024年の米国大統領選挙の結果、現政権ほど積極的にウクライナを支援しない政権が誕生した場合も、中・東欧への信頼感を損なう可能性がある。

WIIWは、ウクライナとロシアの経済見通しも発表した。ウクライナは2022年の劇的な下落(マイナス29.1%)の後、2023年に1.6%のプラス成長に戻る。戦争による破壊、国民の15%が国外に避難したことを考えると、印象的な回復力だとしている。一方、ロシアの経済成長は2022年にマイナス2.1%と縮小し、2023年も0.0%と停滞する見通しだ。自動車産業(2022年に45%減)や小売業(同12.7%減)など輸入依存型の産業部門は対ロシア経済制裁の影響を受けたが、軍事産業や輸入代替産業が好景気だった(例えば医薬品産業が26.5%増)。ただし、これらのデータはロシアの公式な情報源から得たもので、解釈には注意が必要としている。

WIIWはウクライナにおける戦争がオーストリア経済に与えた影響についても分析した。キエフ経済大学のデータベース「Leave Russia」によると、ロシアによるウクライナ侵攻以前からロシアで活動しているオーストリア企業61社のうち37社は依然としてロシアで従来通りビジネスを続けているが、11社は経済活動をある程度縮小した(注2)。オーストリア企業の事業継続の割合は他のEU加盟国に比べて高いとWIIWは分析した。また、WIIWの分析によると、オーストリアの対ロシア輸出は2022年に前年比で8%減少した(EU平均38.1%減)。経済制裁の対象になっていない食料品などの輸出が多かったためと指摘した。

(注1)ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリーの中・東欧4カ国。

(注2)2023年5月8日に閲覧。

(エッカート・デアシュミット)

(中・東欧、西バルカン、ロシア、ウクライナ、オーストリア)

ビジネス短信 ae8fa3c930f499d8