第1四半期のGDPはプラス成長続けるも減速

(マレーシア)

クアラルンプール発

2023年05月23日

マレーシア中央銀行と統計局は5月12日、2023年第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率が前年同期比5.6%だったと発表した。内需の底堅さに下支えされプラス成長を維持したものの、2期連続で減速した。

需要項目別にみると、GDPの6割強を占める個人消費が前年同期比5.9%増となり、労働市場の改善や最低賃金の引き上げなどを背景に成長を牽引した〔添付資料「表1 需要項目別実質GDP成長率〔前年(同期)比〕の推移」、「図 実質GDP成長率と項目別寄与度の推移(前年同期比)」参照〕。政府消費は、政府による支出減で前期の3.0%増から2.2%減とマイナスに転じた。民間投資が前期の10.3%増から4.7%増、公共投資が前期の6.0%増から5.7%増へとともに減速した。純輸出は、観光活動の回復により、54.4%増と前期の23.0%増から大幅に加速し、GDP成長への寄与度も唯一、前期から拡大した項目だった。

産業別では、全ての産業が引き続きプラス成長を達成したものの、伸び率は前期を下回った(添付資料表2参照)。GDPの6割弱を占めるサービス業が、前年同期比7.3%増と前期9.1%増から減速した。その中にあって、小売り、自動車、住宅は2桁増を記録し成長に寄与した。製造業は3.2%増(前期3.9%増)と、前期からやや減速した。ゴム製品、プラスチック製品、コンピュータと周辺製品などが引き続き振るわなかった一方、精製石油製品、化学・同製品および医薬品、自動車と輸送機器などが前期から加速し同産業の成長を下支えした。そのほか、建設業が7.4%増(前期10.1%増)、鉱業・採石が2.4%増(前期6.3%増)、農業が0.9%増(前期1.1%増)と軒並み減速した。

通年の見通しについては見解分かれる

GDP発表前にロイター通信が行った事前調査では、エコノミストによるGDP成長率の予測値平均は4.8%だった。第1四半期の成長率はこの事前予測を大幅に上回った。中銀のノル・シャムシア・ユヌス総裁は記者会見で、「経済はもはや危機に陥っておらず、力強く成長している」と強調した。ただし、それとは対照的に、国内では悲観的な見方も少なくない(同日付フリー・マレーシア・トゥデイ)。「成長がほとんど感じられない。外需が弱まる一方、輸入原材料の価格が依然として高止まっているため、ビジネス環境は引き続き厳しい。リンギ安も課題だ」と、マレーシア製造業者連盟(FMM)のソー・ティアンライ会頭は同紙に語った。政府系シンクタンクのマレーシア経済研究所(MIER)のシャンカラン・ナンビア上席研究員も「外需がプラスに寄与しない可能性があり、地政学リスクの問題も依然として残っている。当期の成長率を通年で維持できるかどうか不明」と述べた。

(エスター頼敏寧)

(マレーシア)

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