連邦政府、量子技術への取り組み方針などを閣議決定

(ドイツ)

ミュンヘン発

2023年05月02日

ドイツ連邦政府は4月26日、連邦教育・研究省が取りまとめた「量子技術に関する基本構想」を閣議決定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同基本構想は量子技術に関して、連邦政府の2023~2026年の取り組み方針と目標などをまとめたもの。

基本構想で重点を置いているのは、(1)産業、社会、国立研究機関での量子技術の活用という目標、(2)連邦政府は具体的目標を定めて量子技術の発展を促す、(3)量子技術活用・推進のためのエコシステムを構築することだ。(1)~(3)それぞれに、2026年までに連邦政府が取り組むべき事項が記され、巻末には、量子技術に関連する連邦政府の戦略・プログラム、国内の国立機関や研究組織、クラスターなども記載されている。

ベティナ・シュタク=バツィンガー教育・研究相は今回の閣議決定に際し、「量子技術はわれわれの社会・経済にとって大きな可能性がある未来のキーテクノロジー」とした上で、「『基本構想』によって、ドイツが量子技術分野で世界トップクラスの地位を占め、同時に技術的主権も確保したい」とコメントした。連邦政府は2026年までに約21億8,000万ユーロを量子技術関連予算として確保、また、連邦政府が資金的援助をする研究機関などに約8億5,000万ユーロを確保する。そのため、2026年までに全体で30億ユーロ規模のプロジェクトとなる。

連邦政府は、量子技術が気候変動研究、エネルギー供給、モビリティー、ヘルスケア、デジタル化・人工知能(AI)などの幅広い分野で活用できると期待している。また、ドイツは現時点で量子技術分野の競争力を有しているとの認識だ。その根拠として、(1)量子技術に関する基礎研究が進んでいる、(2)量子技術関連のスタートアップと大企業の集積がある、(3)量子センサーなどでは一部製品化まで至っていることを挙げている。他方、量子コンピュータでは、開発が進む米国、中国、英国に追いつく必要があるとした。

ドイツでは州レベルで量子技術への取り組みも進んでおり、例えば、ドイツ南部のバーデン・ビュルテンベルク州は4月21日、量子技術関連の組織「Quantum BW外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」の立ち上げと、「量子技術戦略PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表した。ビンフリート・クレッチマン同州首相は4月3日、工作機械・レーザ技術トルンプの量子技術子会社を視察している(2023年4月14日記事参照)。

(高塚一)

(ドイツ)

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