デング熱の感染者が増加、保健省が包括的プログラム開始

(スリランカ)

アジア大洋州課

2023年05月22日

スリランカで、デング熱の感染者が増加している。国立デング熱管理プログラム(National Dengue Control Programme:NDCP)の最新データによると、2023年1月から5月16日までに、全国で3万4,511人(死亡者22人を含む)の感染者が報告されている。国連人道問題調整事務所(UN Office for the Coordination of Humanitarian Affairs:OCHA)の16日の報告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、この数値は、過去2年間に記録された症例の約3倍に当たるという。また、5月の前半2週間で、約4,000件の症例が報告されたとし、全国的な流行への懸念が高まっている状況だ。感染者数は西部州に最も集中し(1万7,049件)、全感染者数の半数以上を占めている。

全国的な感染拡大状況を受け、NDCPにより全国の59の保健省医務官(MoH)管轄区域をデング熱ハイリスクゾーンに指定した。

保健省も16日のサマン・エカナヤケ大統領秘書官からの指示外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを基に、デング熱の流行に対抗する包括的なプログラムを全国で開始した。同省は、デング熱の感染緩和のため、毎週金曜日を清掃日とすることを提案した。また、政府機関や学校、その他の施設の責任者に対し、蚊の繁殖場所となり得る場所の点検や清掃の助言に加え、都市部や農村部の住宅や商業施設の定期点検を推奨し、拡声器による情報発信、デング熱患者の特定、燻蒸(くんじょう)や現場検査などの措置の実施を強調した。さらに、市民の支援によるところも大きいことから、地域社会の積極的な参加と協力を強く求めた。

デング熱は、ネッタイシマカやヒトスジシマカ(日中の午前10時ごろから午後4時ごろが活動のピーク)が媒介する熱帯や亜熱帯地域(主に都市部、半都市部)で発生するウイルス感染症だ。通常は季節性で、スリランカでは雨季で蚊が増える6月から8月ごろと、11月から翌年1月ごろの年2回、ピークがあるとされ、注意を要する。

同国をはじめ、バングラデシュやインドなど南西アジア地域では、雨季になると多くのデング熱が流行するが(2022年11月8日記事参照)、世界保健機関(WHO)によると、これらの国々では雨季が大幅に長期化しているという。そのため、従来はデング感染症が見られなかったネパールなど、本来は熱帯地域ではない温帯地域の国々にも広がりつつあるとされる。

WHOは、世界の人口40%がデング熱の危険にさらされていると推定しており、感染者は年間約3億9,000万人に及ぶ。WHOは、エボラ出血熱やヒト免疫不全ウイルス(HIV)と同様に、デング熱を公衆衛生に対する脅威のトップ10の1つに分類外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしている。

(寺島かほる)

(スリランカ)

ビジネス短信 8920713ccdf329b5