世界報道自由度指数2023、南西アジア地域は全体的に低評価
(インド、スリランカ、パキスタン、バングラデシュ)
アジア大洋州課
2023年05月19日
フランス・パリに本部を置く国際ジャーナリスト組織、国境なき記者団(Reporters Sans Frontières:RSF)は世界報道自由デーの5月3日、「世界報道自由度指数 2023(Press Freedom Index 2023)」を発表した。
同指数は、180カ国・地域のジャーナリズムを取り巻く環境を段階分けして評価しており(注)、(1)31カ国・地域を「非常に深刻」、(2)42カ国・地域を「困難」、(3)55カ国・地域を「問題あり」、(4)52カ国・地域を「良好」または「満足できる」とした。
クリストフ・ドゥロワールRSF事務局長は、2022年から前例をみないほど大きく順位を変えた国・地域が顕著で、ジャーナリストの置かれた状況が非常に不安定な点を指摘。また、「多くの国で当局の攻撃性が増し、ソーシャルメディア上でも現実社会においても、ジャーナリストに対する敵意が高まっている結果だ」とコメントした。
南西アジアについての同ランキングの概要は次のとおり。
〇インドは150位から順位を下げ161位だった。RSFは、同国の報道環境が「問題あり」から「非常に深刻」な状況に変化したことに触れ、報道の自由を制限する事例として、ナレンドラ・モディ首相と関係が密接なアダニ・グループによるメディア買収を取り上げた。
〇163位(2022年は162位)のバングラデシュについては、2024年に予定されている総選挙に向けて、政府による独立メディアへの迫害が強まっているとコメント。また、人口1億7,000万人の同国においてインターネットの役割は大きくなっているものの、5分の1以上が貧困のため主流メディアへのアクセスがほとんどないと指摘した。
〇パキスタン(150位、2022年は157位)は、ジャーナリストにとって世界で最も危険な国の1つであり続ける一方で、政権交代によってメディアに対する制約が緩和されたとした。
〇スリランカ(135位、同146位)の順位上昇の背景として、政権交代の進展を挙げた。
同ランキングでは、ノルウェ―が7年連続で首位に立った。2位以下は、アイルランド(2022年は6位)、デンマーク(同2位)のほか、スウェーデン、フィンランドと北欧諸国が上位に名を連ねた。日本は68位で、前年から3ランク順位を上げたものの、G7諸国の中では最下位だった。
(注)同指数は、政治概況、法的枠組み、経済概況、社会・文化状況、および安全性の5指標を評価基準としている。
(寺島かほる)
(インド、スリランカ、パキスタン、バングラデシュ)
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