米主要港、3月の小売業者向け輸入コンテナ量は前月比5.0%増、2023年上半期は前年同期比22.8%減の見通し

(米国)

ニューヨーク発

2023年05月10日

全米小売業協会(NRF)と物流コンサルタント会社のハケット・アソシエイツが発表した「グローバル・ポート・トラッカー報告」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(5月8日)によると、3月の米国小売業者向けの主要輸入港(注)の輸入コンテナ量は前月比5.0%増の162万TEU(1TEUは20フィートコンテナ換算、添付資料図1参照)となった。NRFによると、国内の主要港の輸入貨物量は、2月の約3年ぶりの低水準から回復し、今夏にかけて徐々に増加するとみられるが、経済の先行きに不透明感が漂う中で、9月までは2022年を大きく下回る水準にとどまると見込んでいる。

発表の中で、NRFのサプライチェーン・税関担当バイスプレジデントのジョナサン・ゴールド氏は「消費者は依然として支出しており、2023年の小売売上高は増加すると予想されているが、過去2年間のような爆発的な需要は見られない」と述べた上で、「輸入量の減少に伴い、港湾の混雑はほぼ解消されたものの、トラック運転手の不足から空のコンテナをターミナルに戻すなど、サプライチェーン上の課題は残っている」と指摘した。

米国西海岸の港湾では現在も労働協約が締結されない状況が続いているが、国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)は4月20日、太平洋海事協会(PMA)と暫定合意に達したと発表した(2023年4月21日記事参照)。同氏も、この進展については喜ばしいことではあるものの、「両者によって批准される新しい協定が締結するまで、状況を注意深く監視し続ける」としている。

また、ハケット・アソシエイツの創設者ベン・ハケット氏は、高インフレが長期化しているほか、連邦準備制度理事会(FRB)による利上げや、最近の銀行破綻の動きが相次いでいることから、経済の先行き不透明感が依然として高いことについて言及し、「2022年末からほとんどの港で、前年比で輸入量が減少しており、中国からの輸出減少が消費財の需要減速を浮き彫りにしている」と指摘した。また、同氏は先行きについて、2023年上半期の輸入の減少幅はNRFの2023年4月時点の予想を上回り、「インフレ率と在庫余剰が減少するまでは、輸入は最近の水準を下回る状態が続く」との見方を示した。

グローバル・ポート・トラッカーの見通しでは、4月の輸入コンテナ量は前年同月比23.4%減の173万TEUと大幅に減少すると見込まれている。また、5月の貨物取扱量は同23.5%減の183万TEUと前年比で減少傾向が続く一方、7月には200万TEU以上まで回復すると推定されている。ただし、前年比で大幅な減少が続いているが、NRFによると、これは2022年の数値が異常に高かったことによる。

なお、NRFは2023年上半期の貨物取扱量の見通しについて、4月時点で予測した前年同期比20.2%減の1,080万TEUから、22.8%減の1,040万TEUに下方修正した。2023年通年の貨物取扱量の見通しはまだ発表されていないものの、第3四半期(7~9月)は600万TEU(前年同期比7.2%減)、1~9月は1,650万TEU(同17.8%減)と見込む。2022年通年の取扱量は前年比1.2%減の2,550万TEUとなり、過去最多に達した2021年の2,580万TEUを下回った(添付資料図2参照)。2023年の取扱量はその水準をさらに下回るとみられる。

(注)主要輸入港には、米国西海岸のロサンゼルス/ロングビーチ、オークランド、シアトル、タコマ、東海岸のニューヨーク/ニュージャージー、バージニア、チャールストン、サバンナ、エバーグレーズ、マイアミ、ジャクソンビル、メキシコ湾岸のヒューストンの各港が含まれている。

(樫葉さくら)

(米国)

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