政府が重要鉱物の確保に向けた基金設立

(フランス)

パリ発

2023年05月17日

フランス政府は5月11日、エネルギートランジションの重要なカギとなる重要鉱物・金属の確保に向けた投資基金の設立を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

民間金融機関や産業界から資金が拠出される基金に、政府が2021年に発表した国家投資計画「フランス2030」(2021年10月14日記事参照)の枠組みから5億ユーロを拠出する。この基金はインフラと技術に特化した投資機関のインフラビアによって運用される。また、政府に代わって政府系金融機関CDC(預金供託金庫)が管理者として参画する。インフラビアは今後、同基金を20億ユーロに増額することを目指す。

政府は「フランス2030」を公表して以来、基金やファンドオブファンズを通じて、工業化やサステナブルな開発を促進する優先分野への投資を加速している。重要鉱物については、2022年10月に、国内での調達を強化するため、工業用鉱物の生産・加工大手のイメリスによるリチウム採掘事業をはじめとする5件のプロジェクトを選定し、総額9,400万ユーロの助成を実施している(2022年10月31日記事参照)。

同基金は、フランスや欧州の企業による欧州内や域外での採掘・精錬・リサイクルといった重要鉱物・金属のバリューチェーンに関連するプロジェクトに、少数株主として出資する。また、オフテイク契約(注)の締結によって重要鉱物の確実な確保を図り、フランスや欧州企業へ供給する。

エネルギートランジションに向けて、特に電気自動車(EV)やカーボンフリーなエネルギーの生産に大量の重要鉱物や金属が必要になる。政府は同発表で、グローバル経済と地政学の複雑性が増す中、他国への経済的な依存を高めないために、フランスや欧州が重要鉱物の供給で主権を持つことは重要な課題で、グリーンな工業化を進める上での条件と指摘した。

また、重要鉱物の供給を自ら確保することで、社会的、環境的に責任ある鉱業の基準を世界的に広めることも可能になるとしている。

インフラビアによると、同基金は2023年末までに10億ユーロとし、運用期間は25年間に設定する。

(注)プロジェクトファイナンスで、事業会社が生み出すサービスの購入を定めた契約のことをオフテイク契約(長期供給契約)という。

(坂本紀代美)

(フランス)

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