出向者給与などの立て替え精算に、税務当局がGST課税の動き

(インド)

ニューデリー発

2023年05月25日

インド財務省間接税関税中央委員会(CBIC)は日系企業を含む外資系企業に対し、本国の親会社から派遣された出向者に係る給与などの立て替え精算について、物品・サービス税(GST)課税の適用対象とする動きをみせている。外国の親会社からインド子会社への出向者の派遣を「人的派遣サービスの提供」、親会社が本国で立て替えた出向者の給与などの子会社による精算を「人的派遣サービスの提供に対する対価」として、後者をGSTの課税対象とするものだ。

今回のきっかけとなったのは、2022年5月の最高裁判決だ。米国系インド子会社ノーザン・オペレーティング・システムズ(NOS)に籍を置く国外グループ会社からの出向者が出向期間中も実質的には国外グループ会社の従業員だったと最高裁が認定。国外グループ会社が本国で立て替えた出向者の給与などのNOSによる精算は「人的派遣サービスの提供に対する対価」に該当するとして、リバース・チャージ方式によるサービス税(GSTの前身)の課税適用が妥当と判断した。

GST税務当局の動きに対し、多くの日系企業が対応に苦慮している。これを踏まえ、インド日本商工会(JCCII)は在インド日本大使館と連携し、CBICとの協議を含めた対応に当たっている。

CBICでGST政策を管轄するサンジェイ・マンガル局長はジェトロなどのヒアリング(5月22日)に対し、次の見解を示している。

  • 今回の最高裁判決で、外資系企業に籍を置く出向者の給与などの立て替え精算がGSTの課税対象となり得るとの判断が示された。インドでは最高裁判決は法律と同じ重みを持つため、われわれもその判断に従う必要がある。
  • 他方、実際にGSTの課税対象となるかどうかは、個別案件によることも承知している。NOSと状況が異なる企業はGST税務担当官に対して、自社が課税対象外となる妥当性を個別に説明する必要がある。GST税務担当官は企業に対して納税を強いることは許されないことから、もしそういった事例があれば報告してほしい。
  • 課税対象となる場合でも、GST税制の通常の要件に従って、企業には仕入税額控除を利用することが認められる。従って、かなり多くの企業が実質的に追加納税を行う必要はないと理解している。
  • その一方で、最高裁判決日以前を含め、過去の期間に相当するGSTの納付は制度上、税金の延滞に該当することとなる。このため、現行制度下では企業は定められた利息を支払う必要がある。

(広木拓)

(インド)

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