山東省、初めての食品安全条例制定に関する意見募集

(中国)

青島発

2023年05月30日

中国の山東省司法庁は5月19日、同省市場監督管理局が発表した「山東省食品安全条例(意見募集稿)」について、パブリックコメントの募集を開始した。募集期限は6月19日までとなっている。

中国政府は近年、食品の安全を重視しており、「中華人民共和国食品安全法」などの国家レベルの法令を頻繁に改正している。山東省には160万超の食品生産事業者が存在しており、その産業規模は大きく、関連する業態も多岐にわたるが、省レベルではこれまで食品安全に関する包括的な条例などが整備されていなかった。例えば、重金属汚染や農薬残留の基準超過、食品添加物の不規則な使用などの問題、デリバリーサービスやライブコマース、越境ECなどの新しい業態や分野で、監督管理制度が完備されていない部分があり、同省の実情に合わせた地方性法規の制定が求められていた。

こうした背景から、山東省政府は省内の食品安全の状況をより一層規範化すべく、この意見募集稿を発表した。条例は計103条から構成し、主に次の内容を示している。

(1)食品安全に対する責任の明確化。食品生産事業者に食品安全管理担当者を配置することを義務付ける。食品チェーンストア経営企業、飲食サービス提供者などに対する法的義務と責任を明確にする。食品安全監督管理に対する政府の責任を明確化し、食品安全業務を政府の年度評価の対象に組み入れる。

(2)食品生産・経営の工程管理を強化。食品の生産チェーンで、食品添加物の使用規制や工場出荷時のサンプル保管、生産再開に向けた自己検査制度の策定、委託生産の規制などを求める。食品生産事業者は、食品添加物の仕様に係る記録システムを確立し、食品添加物の名称や製造者、製造日、使用量などの情報を記録しなければならない。また、食品生産事業者は専用設備あるいは専門エリアに食品添加物を貯蔵し、かつ「食品添加物」の文字を明記しなければならない。

食品流通の段階に関しては、ばら売り食品や賞味期限切れ食品、自動販売設備、特殊食品(注1)の販売などについて具体的な要求を定める。例えば、特殊食品のパッケージの表示内容は、製品登録証明書あるいは関連部門への報告記録と一致しなければならない。

(3)オンライン食品関連ビジネスの監督・管理強化。オンライン食品ビジネスの参入要件とネットワーク上で公開すべき情報の内容を明確化する。食品のオンライン取引で、第三者プラットフォームの提供者やライブコマース・プラットフォームなどの主体が履行すべき食品安全義務を精緻化する。

(4)食品安全管理メカニズムの整備。山東省全体で食品安全トレーサビリティーの統一公共サービスプラットフォームを確立し、食品と食用農産物のトレーサビリティー管理を実施する。食品生産事業者が情報化トレーサビリティーシステムを確立することを奨励・支援する(注2)。

(注1)保健食品、特殊医学用途で調合された食品、乳幼児用に調合された食品。

(注2)入荷や出荷の検査、販売などの記録は食品生産事業者が行う。

(董玥涵)

(中国)

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