第1四半期のGDP成長率、観光回復で前期比0.5%に加速

(スペイン)

マドリード発

2023年05月12日

スペイン国家統計局(INE)は4月28日、2023年第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率(速報値)は前期比0.5%と、前期から加速したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。前年同期比では3.8%。インフレや利上げで消費が冷え込んだが、投資や外需の牽引により予想外の堅調を見せた(添付資料「表 スペインの需要項目別実質GDP成長率の推移」、「図 スペインの実質GDP成長率の推移」参照)。

GDP成長率を需要項目別にみると、民間最終消費支出は前期比マイナス1.3%で、前期に引き続き低迷。総固定資本形成は2022年末からのエネルギー急落を受けた景況感の改善を背景に、1.9%と3期ぶりにプラスに転じ、特に建設投資(住宅を除く)や設備投資(輸送機器を除く)が好調だった。

外需では、輸出が5.8%、輸入が3.1%となり、外需(純輸出)の寄与度は1.3ポイントで、内需低迷(0.8ポイントのマイナス寄与)を相殺して、景気を牽引した。輸出のうち、財の輸出は0.5%減、サービス輸出は21.4%増、特に観光収入が急増した。2023年第1四半期のインバウンド観光客数は1,373万人と、2019年の水準を依然として3.5%下回っているが、観光収入でみると、インフレの影響もあり、11.9%上回っている。

消費者物価指数(CPI)上昇率(インフレ率)は、1月5.9%、2月6.0%、3月3.3%と落ち着きを見せ始めたものの、食料品は依然として15~16%台の高騰が続いており、家計の逼迫ぶりが統計にも反映された。

雇用面では、失業率は13.3%と高止まりを続けるが、就業者数(フルタイム換算)では前年同期比2.3%増と前期の2.0%増から加速した。インフレで個人消費が目減りする中でも、堅調な雇用となっている。スペインは新型コロナウイルス感染拡大からの景気回復が遅れているが、四半期ベースでは2019年第4四半期(10~12月)のGDPを0.2%下回っており、新型コロナ禍前の経済規模回復まであと一息のところまで来ている。

2024年に財政赤字3%を1年前倒しで達成の見通し

スペイン政府は4月28日、欧州委員会に提出した「安定化プログラム」(注)の中で、2023年の実質GDP成長率の見通しを従来どおりの2.1%に据え置き、2024年については2.4%とした。また、新型コロナ禍やウクライナ情勢を受けて中断されていた財政規律が2024年から再開予定であることを踏まえ、同年の財政赤字目標を従来の対GDP比3.3%から3.0%に修正。景気や雇用の堅調、EUの復興基金が経済にもたらすインパクトによって、1年前倒しで短期的な財政健全化を達成することが可能との見通しを示した。

(注)EU加盟国間の経済・財務政策の協調枠組み(ヨーロピアン・セメスター)に基づき、加盟国が欧州委に提出する健全な財政に向けた中期財政計画で、ユーロ導入国は「安定化プログラム」、非ユーロ導入国は「収れんプログラム」と呼ばれる。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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