上海市高級人民法院、「2022年上海市知的財産権審判白書」を発表

(中国)

上海発

2023年05月02日

上海市高級人民法院(上海高院)は4月25日、記者会見を行い、「2022年上海法院知的財産権審判白書」を発表した。

白書によると、2022年に上海市の裁判所が受理した知的財産権に関する案件数は4万2,150件(前年比20.89%減)、結審件数は4万2,763件(前年比12.91%減)だった。「智慧法院プラットフォーム」(注)を活用し、裁判の全プロセスをオンライン処理にしたことで、一審の結審率は96.34%、法定審理期間内の結審率は99.22%となり、審判の質と効果は着実に向上していると示した。

知的財産に関する一審の受理件数は4万1,038件(結審件数は4万1,857件)だった。内訳を見ると、民事案件は4万402件(結審は4万1,206件)、刑事案件は632件(結審は647件)、行政案件は4件(結審は4件)だった。類型では、民事案件のうち、著作権に係る受理件数は2万5,144件、商標権に係る案件は9,408件、特許権に係る案件は3,847件、フランチャイズ契約に係る案件は1,214件、不正競争に係る案件は573件、独占に係る案件は7件、その他は209件だった。2021年と比べて、著作権と不正競争に係る案件数は減少傾向にあり、商標権、特許権に係る案件数は横ばいだった。

2022年に上海市法院が受理した知的財産権に関する民事案件のうち、賠償金額が100万~1,000万元(約2,000万円~2億万円、1元=約20円)の案件は1,182件、1,000万元以上は119件だった。2021年と比べて、賠償金額の高い案件数はやや減少した。

上海市法院では懲罰的賠償の実施に力を入れている。2022年の年間審理案件のうち、懲罰的賠償制度の適用を申請した案件数は22件、結審件数は15件だった。

また、上海高院は世界知的所有権機関(WIPO)仲裁調停上海センターと提携し、紛争解決の多角化を図っている(2022年12月9日記事参照)。同センターは、上海市内の法院の委託に応じて68件の紛争を調停し、結審件数は59件、調停成功件数は19件に上り、成功率は32.2%だった。そのうち、米国、スイス、フランスなど13カ国の当事者が関わる案件が含まれている。

記者会見では、2022年の上海知的財産権法院における知的財産権の保護状況も報告した。同院が受理した一審の案件のうち、特許、ソフトウエア、技術秘密などの技術系案件が4,288件、全体の98.84%を占めている。中にはチップや新材料などの重要なコア技術に関わる案件も多い。

(注)「智慧法院プラットフォーム」については、ジェトロの調査レポート「中国インターネット法院の現状と知財案件動向調査PDFファイル(4.4MB)」(2021年3月)を参照。

(陳貝蓓)

(中国)

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