IMF代表団が融資の公式レビューを前にバングラデシュを訪問、金融セクターの改革前進へ

(バングラデシュ)

ダッカ発

2023年05月18日

IMF代表団は4月25日~5月7日にダッカを公式訪問し、2023年1月に承認した総額47億ドルの融資プログラム(2023年2月8日記事参照)の実行に係るバングラデシュ政府関係者などとのディスカッションを行った。IMFプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、バングラデシュはアジア太平洋地域において最も経済成長著しい国の1つだ。その一方で、持続的なインフレ圧力(2023年4月19日記事参照)やグローバルな金融情勢の変動性の上昇、主要な貿易相手国の市場低迷が、同国の経済成長、外貨準備高、為替相場に引き続き影響を及ぼすと指摘。今般の訪問では、上記の融資プログラムを構成する3つのファシリティー(拡大クレジット・ファシリティー:ECF、拡大信用供与:EFF、強靭性・持続可能性ファシリティー:RSF)の第1回公式レビュー(2023年後半に実施予定)に向け、中央銀行総裁、財務次官、中銀および財務省幹部に加え、民間セクターや2国間援助の拠出国などとの意見交換も行われた。

IMFは今般の融資に際し、政府に対して金融・財政に係る構造改革の必要性とそのスケジュールを示している(添付資料表参照)。例えば外貨準備高は、IMFが規定する算出方法(Balance of Payments and International Investment Position Manual,BPM6PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))により、中銀が運用する輸出志向型産業を対象とした原材料輸入向けのファンド(Export Develop Fund、EDF)に有している外貨を差し引くなどした後の「ネット値」について、2023年6月末時点で244億6,200万ドル、9月末時点で253億1,600万ドル、12月末時点で268億1,100万ドルを目標値として定めている。

バングラデシュの著名な民間シンクタンクのポリシー・エクスチェンジ(Policy Exchange of Bangladesh)創設者兼会長で、世界銀行グループのシニアエコノミストなどを歴任したマスルール・リアズ氏はジェトロのインタビューに対し、「IMF融資に紐づく目標は、大きく外貨準備高と国家歳入庁(NBR)関係に分けられるだろう。前者は特に、IMFの定める国際水準に沿った算出や複数レートが生じている現状の為替システムの改善・変動相場制への完全移行、後者はオンライン化が進みつつある法人所得税を中心とした歳入拡大、新たな所得税法(Direct Income Tax Law)・関税法(Customs Law)の策定を通じた法制度の近代化(Modernization)、不透明かつ数多く設けられている税制優遇措置の削減などが重要とみる」と話す(5月14日)。

(山田和則)

(バングラデシュ)

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