モリブデン精製大手、生産能力を増強、欧州から初の原料調達へ

(ベルギー、チリ、カナダ)

ブリュッセル発

2023年05月24日

チリのモリブデン精製大手モリメットは5月10日、ベルギー北部ゲントのモリブデン精製施設の能力を拡張すると発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、オランダ語)。敷地内に風力タービンを稼働させ、再生可能エネルギー由来の電力を使用することで、2030年までにモリブデンの生産プロセスにおけるカーボンニュートラル(炭素中立)を目指すとしている。

モリメットのベルギー工場は欧州最大のモリブデンの一貫型生産施設で、高純度の三酸化モリブデンなど、最先端の化学・エレクトロニクス分野で需要が高まる製品を製造するための独自技術の開発にも取り組んでいる。今回の能力拡張により、年間9,000トンの高純度のモリブデン製品の生産が見込まれるため、鉄鋼・非鉄金属といった既存の顧客企業に加え、最新型の風力タービン用資材や、環境配慮型燃料向けの触媒、医療機器や電子機器など、様々な分野にモリブデン製品を供給することが可能になるという。

モリブデン精鉱を欧州領域から初めて調達

モリメットはまた、カナダのグリーンランド・リソーシズがグリーンランドで採掘するモリブデン精鉱について、今後20年間の調達を確保する覚書(MOU)を締結したことも明らかにした。グリーンランド・リソーシズは、モリメットへのモリブデン精鉱の販売に加え、モリメットへ委託するかたちでフェロモリブデンや、酸化モリブデン、二モリブデン酸アンモニウムといった製品を製造し、鉄鋼・化学企業に直接販売することも検討している。

モリブデンは、欧州委員会が発表した重要な原材料法案(2023年3月22日記事参照)では、重要原材料とは指定されていないものの、使用用途が広く、産業面での重要な役割を有している。今回の合意により、モリブデン精鉱が欧州領域から初めて調達されることとなり、欧州にとってサプライチェーンの強化・安定化が期待できる。

(山田泰慎)

(ベルギー、チリ、カナダ)

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