EU、工芸品や工業製品向けの新たなGI保護制度の設置規則案で政治合意

(EU)

ブリュッセル発

2023年05月18日

EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は52日、工芸品や工業製品の知的財産を地理的表示(GI: Geographical Indication)として保護する枠組みを規定する規則案に関して、暫定的な政治合意に達したと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。規則案は、今回の政治合意に基づき、EU理事会と欧州議会による正式な採択を経て発効するとみられる。なお、合意テキストは現時点では公表されていない。

EUでは、農産品などに関して、特定の国や地域を原産地とし、品質や評判などの特性と原産地に結びつきのある場合に、その名称をGIとして登録し、保護する制度がある。工芸品や工業製品は、現状では一部の加盟国法に基づく保護にとどまっているため、欧州委員会はこれらもGIで保護することを提案していた(2022年4月15日記事参照)。農産品などと同様に、EUレベルの統一的なGI保護制度の設置を規定することで、職人や中小企業などが持つ伝統的な製法をEUレベルで保護・支援でき、こうした産業にイノベーションが生まれ、投資が呼び込まれることが期待されるという。

欧州委は、新制度によってGI登録が見込まれる工芸品や工業製品の具体例として、ムラーノガラス(イタリア)、リモージュ磁器(フランス)、ゾーリンゲンのカトラリー(ドイツ)、ドニゴールツイード(アイルランド)、アルバセテのナイフ(スペイン)、ボレスワヴィエツ陶器(ポーランド)を挙げている。

今回の政治合意は、欧州委提案におおむね沿った内容とみられるが、GI登録手続きに関して、簡素化や効率化が一部図られたほか、中小企業向けのGI登録の促進策も盛り込まれた。このほか、模倣品対策など、オンライン販売でのGI保護を容易にする規定も含まれた。

また、規則案は、GIなどの国際的な保護に関する「原産地名称及び地理的表示に関するリスボン協定のジュネーブ改正協定」と整合性を有しており、規則案に基づいてGI登録された工芸品や工業製品は、同協定の締約国でも保護を受けることができる。なお、EU201911月に同協定を批准しているが、日本は現時点では批准していない。

(吉沼啓介)

(EU)

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