政府調達や公共事業など行政プロセスに関連した改正法案を国会に提出

(メキシコ)

メキシコ発

2023年04月14日

メキシコ政府は3月28日に、政府調達や公共事業などの行政プロセスに関連する23の法律を改正する法案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を国会に提出した。これに対し、識者や経済界から強い懸念の声が上がっている。法案趣旨説明によると、一連の法改正は、政府と民間企業の間の契約などのプロセスにおける(1)腐敗行為の是正、(2)公共利益や国庫への害を招く行為の防止、(3)連邦行政機能の強化、の3つを目的とする。

経済界や識者の間で特に懸念が強いのは、政府との契約締結者や政府から許認可を受けたものが、管轄当局の定める「新たな要件」(契約時の要件ではない)を満たさなくなった場合、または、当該契約行為などにより、公共、一般、社会の利益や国防に悪影響を及す、経済、社会、環境に害を成す、または基本的人権を侵害するような事象が生まれた場合、契約や許認可などを政府が一方的に取り消すことを可能にする規定だ。加えて、政府調達などの契約書の中に、国の判断で一方的に契約を終了できる条項を盛り込む義務を設け、公共、一般、社会の利益や共有財産保護、人民や国家組織の安全や健全性の保護を目的とする場合や、既に契約者が投資を回収したと見なされる場合には、これらの一方的契約終了に際して、政府が民間企業に補償金を支払う必要はないと定める規定も特に懸念が強い。

このほか、国内裁判や国際仲裁などにより、政府が民間企業に対して補償金の支払いを求められた場合でも、その補償額に上限を設ける規定がある。社会的権利の執行、国の経済開発、国家主権の保護や国防といった観点から緊急性があると国が判断する場合は、環境などの許認可取得や土地の所有権確保などのプロセスを経ずに、国(国営企業や軍を含む)が公共事業を開始することができるという規定がある。公共、一般、社会の利益や国防の理由であれば、国営機関が入札プロセスを経ることなく、道路や鉄道の建設や公共財産の管理を無期限で直接請け負うことができるという規定もある。これらの規定は、国と民間企業の間の競争条件を著しく不平等にする内容として、経済界や識者の間で懸念の声が上がっている。

憲法や国際協定に反するとの見解も

メキシコ工業会議所連合会(CONCAMIN)は4月11日、「法的信頼性は国の行政秩序のいかなる関心よりも優先させるべき」という声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出し、国会議員に対し、公聴会などを通じて経済界も含めた全ての関係者が参加する議論を行うことを要請した。日本の経団連に相当する企業家調整評議会(CCE)も4月12日、ツイッターを通じて声明を出し、同法案はメキシコ憲法に加え、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)など国際協定にも反する内容が含まれ、個人の自由や人権を侵害するとし、幅広い国民の声を聴き、法的枠組みを強化し、中小企業に安心感を与え、国の開発とメキシコへの信頼を促進する方向で、経済界と国会が共に手を携えていくことを信じると強調した。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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