バイデン米大統領、保育・介護ケアサービス拡大目指す大統領令に署名

(米国)

ニューヨーク発

2023年04月24日

米国のジョー・バイデン大統領は4月18日、保育や高齢者介護サービスの拡大を目指す大統領令に署名外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。大統領令には50超の具体的事項が盛り込まれた。

ホワイトハウスが発表したファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、米国では、保育費用は過去10年間で26%増、過去30年間では3倍以上に増加しており、介護費用については過去10年間で40%増加している。この結果、特に女性が労働力から遠ざかり、経済成長の足かせになっているとしている。ボストンコンサルティンググループによると、手頃な価格での保育施設が現状のように不足し続ければ、2030年以降のGDPで毎年2,900億ドル以上の損失が生じる可能性がある。2019年には、保育サービスを求めた世帯の75%以上が適切なサービスを見つけられなかったほか、介護についても長期介護サービス提供事業者の75%以上が新たな受け入れができない状況だったことから、両サービスの受け皿整備が急務となっている。

具体的な指示事項としては、保育サービスの無償提供または自己負担の削減措置を検討するほか、米国内で最も賃金の低い職種の1つとされる保育士などの給与や福利厚生を高める措置を講ずるとしている(注1)。また、特に家庭内で従事するケアワーカーは低賃金で、差別などの対象になりやすくなっていることから、事業者との雇用契約のサンプルを行政が発行することで、その権利保護を進めていくとしている。女性が現在、約3分の2を占めている家族介護者については、レスパイトケア(注2)の支援や家族介護者のメンタルヘルス支援など、家族介護への支援を拡大していくとしている。

2024年度(2023年10月~2024年9月)予算教書では、保育について10年間で6,000億ドル、介護については同じく10年間で1,500億ドルの予算が盛り込まれている(2023年3月10日記事参照)。共和党は同予算に反対の構えだが、バイデン大統領は今回の大統領令発出後の会見で「共和党の提案では全てのプログラムと、裁量的支出について22%削減されるが、彼らはこの事実をあなたたちに伝えていない」として、保育や介護も削減しようとする共和党の姿勢を批判している。

(注1)米国の一般的な非管理職の時給は28ドル以上だが、保育士などは賃金の中央値が時給18ドル以下となっており、米国内で最も賃金の低い職種の1つとされている。

(注2)主たる家族介護者が休息するための一時的なケアサービス。

(宮野慶太)

(米国)

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