米国土安全保障省、AIタスクフォース設立へ、中国の脅威評価も開始

(米国、中国)

ニューヨーク発

2023年04月27日

米国のアレハンドロ・マヨルカス国土安全保障長官は4月21日、米国シンクタンクの外交問題評議会で国土安全保障の現状について講演外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同長官は講演外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの中で、国土安全保障省(DHS)内に人工知能(AI)に特化したタスクフォース(AITF)の設立と、中国がもたらす脅威に対する90日間の集中的な対処・評価を行うと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

マヨルカス長官はAITF設立の理由について、AIが米国土への脅威の状況を劇的に変化させるさまざまな方法に対処し、それらの脅威に立ち向かう手法を増強させる必要があると説明した。中国に関しては、南シナ海での攻撃的な行動や台湾侵攻が実現した場合の米国に対するサイバー攻撃のリスクに言及し、「中国はDHSのミッションの全てに関わる重大な脅威を米国土にもたらしている」と強調した。

DHSはAITFで、国土安全保障のための重要施策へのAI適用を推進する。具体的には、貿易における貨物の審査や強制労働によって生産された製品の特定、フェンタニル(注1)の米国への流入検知にAIを活用することを目指す。オンライン上での児童虐待への対応も検討する。また、産業界やアカデミアと協力して、重要インフラの安全確保にAIが与える影響を評価する。AITFの設立を指示する覚書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、AITFは45日以内にこれらの4つの優先課題に取り組む上での中間目標などを設定し、その後60日ごとに進捗を報告するよう義務付けられている。DHSは2022年6月に施行されたウイグル強制労働防止法の執行戦略(2022年6月21日記事参照)でも、輸入物品のサプライチェーンを追跡する方策としてAIの利用を挙げていた。

中国の脅威に関する90日間の取り組みでは、6つの重要分野でリスク軽減策を講じ、脅威評価を行う。例えば、入国管理に関し、知的財産の窃盗などを目的とする中国からの不法な渡航者の審査強化を目指す。中国の悪意ある経済的影響に対して、外国からの買収に伴うサプライチェーン上のリスク評価や、サプライチェーンからの強制労働排除などに取り組む。90日間の取り組みを指示する覚書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、DHSの担当次官が取り組み終了後45日以内にその結果をまとめた報告書をマヨルカス長官に提出するよう求められている。

AITFと中国に関する取り組みに共通する強制労働への対処は、DHSが4月20日に公表した報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでも言及している。同報告書は、国内法に基づいて4年ごとに国土安全保障に関わる戦略について評価するもの。DHSは今回の報告書で、強制労働を含む人身取引などへの対応をDHSの主要ミッションに新たに加えた(注2)。

(注1)合成オピオイドの一種で、鎮痛剤として使用されるが、米国では過剰摂取による死者が増えており、社会問題になっている。

(注2)そのほかの主要ミッションは、テロ対策、国境の安全確保、出入国システムの管理、サイバー空間と重要インフラの安全確保、災害対応。

(甲斐野裕之)

(米国、中国)

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