2022年の欧州の風力発電事業への投資、前年から大幅減、2009年以降最少に

(EU)

ブリュッセル発

2023年04月06日

欧州風力協会(ウインド・ヨーロッパ)は3月29日、2022年の欧州の風力発電事業の資金調達や投資傾向に関する報告書を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。2022年の投資額は約170億ユーロと、前年の約410億ユーロから大きく落ち込み、2009年以降最も低い水準となった。国別でみると、投資額が大きかったのはドイツ(23億ユーロ)、フィンランド(21億ユーロ)、ポーランド(19億ユーロ)の順だった。

2022年に投資が行われた事業が順調に進展すれば、欧州全体で12ギガワット(GW)、うちEU域内では10GWの発電容量を確保できる。しかし、ウインド・ヨーロッパは、「リパワーEU」計画(2022年9月1日付地域・分析レポート)に基づくと、2030年までに毎年31GW増やす必要があるとギャップを指摘。風力タービンの受注数も減少しており、新たな発電所も必要数の半数程度しか建設が進んでおらず、「リパワーEU」の目標を達成したいのであれば、EUは投資家の信頼回復に努め、風力発電事業に資金を呼び込むべきだと訴えた。

また、報告書によると、2022年の投資は、ほぼ全てが陸上風力発電を対象とし、洋上風力発電への投資は前年の約166億ユーロから約4億ユーロに激減しただけなく、2013年からの10年間でみても際立って少なかったことが特徴的だ。洋上風力への投資は、地中海におけるフランスの2カ所の浮体式洋上風力発電のパイロットファーム(発電容量は合計60メガワット)のみだった。2022年は多くの事業計画への最終判断が見送られ、大規模な洋上風力発電所建設への投資の最終判断は全く行われなかった。しかし、ウインド・ヨーロッパは、ドイツで2023年3月に同国最大級の洋上風力発電施設への投資が最終決定した(2023年3月27日記事参照)ことを挙げ、2023年は投資が決定する大型案件が複数あるとの期待を示した。

ウインド・ヨーロッパは2022年に投資が減少した背景として、投入コストの増大とサプライチェーンの混乱を挙げた。地政学的な変化やエネルギー危機に伴い、原材料や国際輸送コスト、電力価格が高騰し、欧州での風力タービンの製造コストはここ2年間で約40%も上昇した。ウインド・ヨーロッパは、全ての再生可能エネルギーの入札制度を物価の上昇などと連動するものとすべく、各国政府に対して早急な対応を求めた。また、EUや加盟国政府によるエネルギー価格の高騰を受けた緊急介入策(2022年10月3日記事参照)なども投資家心理を冷やしたと指摘。欧州で主要金利の引き上げが続いたことも影響し、新たな風力発電所建設に向けた銀行からのノンリコースローン(注)は、2021年の約4分の1以下となる約37億ユーロまで落ち込み、2005年以降最も少なかった。さらに、風力発電事業の複雑な許認可プロセスも要因だとして、プロセスの短縮化やデジタル化の推進も必要だと提言した。

(注)特定の事業や資産から生じるキャッシュフローのみを返済原資とするローンのこと。

(滝澤祥子)

(EU)

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