アフリカのモバイルマネー取引額は前年比22%増、東・西アフリカで9割以上を占める

(アフリカ、ナイジェリア)

中東アフリカ課

2023年04月25日

モバイルコミュニケーションに係る業界団体GSMAは4月18日、「モバイルマネーに関する産業動向レポート2023」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。同報告書によると、2022年のアフリカのモバイルマネー取引額は前年比22%増の8,365億ドルだったほか、取引件数は21%増の449億件、登録アカウント件数は17%増の7億8,100万件だった(添付資料表参照)。

取引額が多かったのは、東アフリカ地域(4,918億ドル、前年比23%増)と西アフリカ地域(2,770億ドル、同22%増)で、両地域合わせてアフリカ全体の取引額の9割以上を占める。そのほか、中央アフリカ地域576億ドル(10%増)、南部アフリカ地域53億ドル(14%増)、北アフリカ地域47億ドル(28%増)となっている。なお、東アフリカ地域と西アフリカ地域は、取引件数でそれぞれ280億件(18%増)、120億件(29%増)、登録アカウント件数でそれぞれ3億9,000万件(12%増)、2億9,000万件(27%増)となっており、いずれも両地域合わせてアフリカ全体の9割弱を占める。

本報告書は、特に西アフリカ地域がアフリカ全体のモバイルマネー市場の成長を牽引しているとしている。それによると、2018年以降、同地域におけるモバイルマネーの登録アカウントのうちアクティブユーザーの割合は右肩上がりとなっており、2022年は30%(注1)の伸びを記録した。エージェント(注2)の登録件数についても、前年の2.6倍となる649万件となっており、多くの人々が積極的にモバイルマネーを活用していることが示されている。中でも、ナイジェリアでは、8割以上の国民がモバイルマネーアカウントを所有しているという。

本報告書は、モバイルマネー関連規制についても触れている。それによると、新型コロナウイルス感染拡大などの影響で財政難に苦しむ一部のアフリカ諸国は、モバイルマネーに対して課税を行っており、2022年は、ガーナ、タンザニア、カメルーンが課税に踏み切った。もっとも、このことが消費者の負担につながっており、モバイルマネーに係る財政政策においては、従来金融サービスにアクセスできない層に十分配慮すべきとしている。また、アフリカ諸国の中には、モバイルマネーサービスの利用にあたり、国民IDの発行が進んでいない国が多いことなどを挙げ、アフリカにおけるモバイルマネーのさらなる普及に向けては、課題が多いことも指摘している。

(注1)報告書の本文では25%と記載されているが、全体の数字を示したページでは30%と記載されるなど、数字の齟齬(そご)がある。

(注2)銀行の支店やATM以外の、金融サービスを提供する取引場所を指す。これによって、金融機関に正式な口座を持たない者も金融サービスにアクセスできる。

(梶原大夢)

(アフリカ、ナイジェリア)

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