2022年の電力状況、逼迫が続く

(ベトナム)

ハノイ発

2023年04月19日

ベトナム国内の電力事業を担う国営企業ベトナム電力総公社(EVN)傘下の国家電力調整センター(NLDC)によると、ベトナムの発電設備容量は2022年末時点で、前年比3.3%増の8万704メガワット(MW)だった(添付資料表1参照)。特に風力発電、バイオマス発電の開発が大きく伸長した。

設備容量を電源別にみると、石炭火力(2万6,087MW、構成比32.3%)とガス石油火力(9,025MW、11.2%)を合わせた火力発電が全体の43.5%を占める。水力(2万2,999MW、28.5%)と再生可能エネルギー(再エネ、2万2,022MW、27.3%)はいずれも前年より容量が4%以上増えた。再エネのうち、太陽光発電はほとんど増減がなかったが、風力発電とバイオマス発電は前年から20%以上増加。特に風力は2020年の518MWから9.8倍となる5,059MWとなった。

2022年の発電量は前年比6.1%増の27万2,352ギガワット時(GWh)だった(添付資料表2参照)。

燃料費高騰などの要因から、石炭火力発電の発電量と構成比は低下した。石炭火力の減少分は主に水力、ガス石油火力で補ったが、電力が逼迫しやすい北部では、一時的に電力不足が生じた。NLDCによると、需要が高まる6月から8月の毎月数回、北部で電力供給不足に陥り、ピーク電力が最大で1,800MW不足した。

再エネ発電量は3万4,757GWhで、前年比10.5%増加。特に風力の発電量が2.6倍になった。一方、屋根置き太陽光はマイナス18.9%だった。規制面の問題でグリッドから切断された既存の屋根置き太陽光電源が増加したほか、新型コロナウイルスの活動制限緩和に伴う余剰売電の減少など、複数の原因が考えられる。

今後の電力供給状況について、当地の電力関係者からは、全国の電力需給バランスを試算した結果、より厳しくなるとの見通しも示されている。中部・南部は需給が満たされる見込みが高いが、北部は全国平均よりも高い需要の伸びが予測され、建設中のプロジェクトの推進、送電網整備、電源の最適化、輸入電力の取引など、多岐にわたる対策が必要とされる。

(萩原遼太朗)

(ベトナム)

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