第1四半期の消費者物価指数は4.18%、3月は3.35%でインフレ圧力が低下

(ベトナム)

ハノイ発

2023年04月06日

ベトナム統計総局は3月29日、2023年第1四半期(1~3月)の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同期比4.18%、コアCPI(注1)の上昇率は5.01%と発表した(添付資料表参照)。3月単月のCPIは前年同月比3.35%で、2022年9月以来半年ぶりに4%を割った(添付資料図参照)。3月のコアCPIは4.88%で依然高水準だが、指数は1月をピークに低下し、インフレが抑制されつつある。

第1四半期のCPIを財別にみると、教育は前年同期比10.13%と上昇率が最も高かった。新型コロナ禍の2021年、多くの地域で学校の授業料の減免措置を行なっていたが、2022年から2023年にかけて一部の中央直轄市と省で授業料引き上げの動きがあったためだ。次に上昇率が高かった住居・建築材は7.17%。建設業や不動産業の市況は良くないが、鋼材をはじめとする資材価格の高騰などが影響した。

上昇率が大きく下落したのは交通(ガソリンを含む)で前年同期比マイナス1.71%。公共交通機関などの運賃は値上げされたが、国内のガソリン価格が11.09%下落し、CPI全体を押し下げる要因にもなった。

政策金利を3月15日に引き下げ

ベトナム国家銀行(中央銀行)は、2022年の9月と10月に政策金利を引き上げていた(2023年1月12日記事参照)が、2023年3月15日と4月3日に主要な政策金利を0.5~1ポイント引き下げた(注2)。2023年第1四半期のGDPの伸びが低水準にとどまるなど(2023年4月4日記事参照)、経済減速が懸念されるなか、流動性を高めて経済成長を支援することを目的に、政策転換したとみられる。ただし、急激な利下げはインフレの再加速を招く恐れもあるため、慎重な対応を求める意見もある。

なお、国内では4年ぶりの電力価格引き上げが検討されている。世界的な燃料価格高騰の影響からベトナム電力総公社(EVN)の2022年の赤字は36兆3,000億ドン(約2,070億円、1ドン=約0.0057円)と見込まれており、電力価格の見直しも喫緊の課題の1つだ。引き上げ価格幅次第では企業が商品価格を見直す可能性があり、CPIの動向は依然見通しにくい状況だ。

(注1)コアCPIは総合CPIから穀物、生鮮食品、エネルギー、国家管理材(医療・教育サービスなど)を除いたもの。

(注2)中央銀行は、3月15日付でディスカウントレート(公定歩合)を4.5%から3.5%に、銀行間(インターバンク)市場での翌日物(オーバーナイト)金利を7%から6%に引き下げた。続いて、4月3日付で再割引金利(リファイナンスレート)を6.0%から5.5%に引き下げるなどの決定をした。

(萩原遼太朗)

(ベトナム)

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