欧州企業、53%が気候変動対策に投資、欧州投資銀行報告書

(EU)

ブリュッセル発

2023年04月20日

欧州投資銀行(EIB)は4月13日、2022~2023年気候投資報告書を発表(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。本報告書は、欧州企業約1万2,500社やEUの自治体などを対象にEIBが毎年実施する投資動向調査の結果から、欧州企業の気候変動対策に焦点を当てている。報告書によれば、2022年に気候変動対策に投資をしたと回答したEU企業の割合は53%に達し、前年比10ポイント増となった。特に、中・東欧地域(前年比15ポイント増)と中小企業(11ポイント増)で投資が拡大した。また、エネルギー集約型企業の投資意欲が高く、48%の企業が既に投資しており、57%が今後も投資を行う予定だと回答した。エネルギー効率化を含む気候変動対策に取り組む企業の割合は2021年に加速度的に増え、今後も継続すると見込む。

自社のビジネスに与える影響については、29%の企業が楽観的な一方、32%の企業は悲観的で、ばらつきがみられた。中・東欧の企業は、移行期間をビジネスチャンスよりもリスクとして捉えていた。

エネルギー価格高騰や気候変動への懸念、炭素排出削減目標を背景に、企業は「緩和策(Mitigation)」により力を入れており、88%は廃棄物削減やリサイクル、エネルギー効率化など少なくとも1つの気候変動緩和対策を講じた。また、南欧を中心とする57%のEU企業が異常気象による経済的損失やサプライチェーンの断絶を経験したものの、リスク回避のための対策を講じた企業は33%にとどまった。

エネルギー危機の影響により、EU企業の40%がエネルギー効率化に向けた投資を行い、前年比で拡大したものの、コロナ禍以前の水準には達していない。欧州ではエネルギー効率化向けの投資は、西欧や北欧の企業、エネルギー集約型企業や大企業が主導しているが、10%程度にとどまっている。

投資を妨げる大きな要因としては、国や産業に関係なく多くの企業がエネルギー価格の高騰を挙げた。現在のエネルギー危機は過去と異なり、市場間の相互関係が強く、世界的な影響を与えている。企業はエネルギー価格の高騰や価格変動の影響を緩和するためのツールを求めており、省エネ技術を最重要課題に置いている。一方で、現在の景気の減速や需要の減速、資金調達の厳格化などのリスクは不確実性を高め、企業の気候変動対策への投資の足かせとなっており、ロシアによるウクライナ侵攻に起因するエネルギー価格高騰も継続すると見込まれる。これらを踏まえて報告書は、米国が脱炭素社会の実現に向けた取り組みを通じて経済社会システム全体の変革を目指し投資を加速させている例を挙げ、EUは2050年までに気候中立を達成するという目標をさらに野心的なものにする必要があると提言した。また、気候中立目標の達成に向けた投資強化に向け、域内の政策整備、投資障壁の撤廃、単一市場のさらなる強化が必要との認識を示した。

(大中登紀子)

(EU)

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