住宅賃料の急騰、2023年に沈静化へ

(シンガポール)

シンガポール発

2023年04月28日

シンガポール通貨金融庁(MAS、中央銀行に相当)は4月26日発表のマクロ経済報告で、2022年に過去最高水準へと高騰した住宅賃料が、2023年に新規の住宅供給が進むことで「住宅賃料の上昇が今後数四半期中にも沈静化する」との見通しを示した。同庁によると、2023年に完成する民間住宅と公団住宅(HDBフラット)は合計で約3万9,000戸と、2018年以降最大となる見通しだ(添付資料図参照)。

同国の住宅賃料は、2022年にかけて過去最高水準へと急騰した(2022年12月2日記事参照)。都市再開発庁(URA)の民間住宅賃貸指数は2021年初から2022年末までに43%上昇。また、シンガポール不動産取引所(SRX)のHDBフラット賃貸指数は同時期に38%上昇している。MASは、民間・公共住宅の賃料上昇の理由の1つとして、新型コロナ禍による世界的なサプライチェーンの混乱で建設資材の調達に支障をきたしたこと、渡航規制や感染予防対策により、外国人建設労働者の確保が困難になった点を指摘。この結果、民間と公共住宅の建設に深刻な遅れが生じたと述べた。同庁によると、2020~2022年に新たに完成した民間・公共住宅は合計で年間平均約2万戸と、2018~19年に完成した年間平均戸数約2万6,000戸と比べると約22%少なかった。

また、新型コロナ禍で、国民(永住権者を含む)の間で購入住宅の完成を待つ間の賃貸住宅の需要が一時的に増加したことも、賃料が上昇する一因となった。ただ、MASは、国民と永住権者が購入した住宅物件が今後、完成し、一時的に借りていた住宅物件から退去していくと指摘し、こうした一時的な住宅需要も減っていくとみている。MASは、新型コロナ禍に伴う「(住宅需要と供給の)不均衡の状態は既に、軟化し始めている」と述べた。この結果、「住宅賃料の上昇が向こう数四半期中にも沈静化する」との見通しを示した。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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