政府が労働力調査の結果を発表
(バングラデシュ)
ダッカ発
2023年04月06日
バングラデシュ統計局(BBS)は3月30日、労働力調査2022の速報版を発表した。本調査は、15歳以上の労働人口をはじめとした労働力に関する広範なデータを収集することを主な目的として、1980年から定期的に実施されており、前回調査(2016/2017年度、2016年7月~2017年6月)以来、5年ぶりの実施となった。
調査結果によると、労働人口は7,341万人と前回調査時の6,350万人に比べて約16%増加した。労働人口のうち、就業人口は7,078万人、失業人口は263万人で、失業率は3.6%となり、前回調査時の4.2%から0.6ポイント低下した。一方で、バングラデシュ政策研究所のアーサン・モンスール・エグゼクティブダイレクターは「バングラデシュのような国において、貧困者は生きていくためには働かなければならないため、このような失業率の統計には意味がない。不完全雇用(注1)こそ、バングラデシュにおける重要な課題だ」と話す(「フィナンシャル・エクスプレス」紙3月30日)。
また、産業セクターごとに就業人口の割合をみると、農業に従事する人口の割合が前回調査時の40.6%から45.3%にまで上昇している一方で、製造業に従事する人口の割合が、前回調査時の20.4%から17.2%に低下した。これに対し、世界銀行ダッカ事務所の元主任エコノミスト、ザヒード・フセイン氏は「製造業はこの5年間で最も急速に発展している産業であるため、この現象はやや不可解だ」と述べた(同上)。新型コロナ禍でのロックダウンなどの影響で、もともと製造業やサービス業に従事していた労働者が失職し、農業に従事するようになったことなどが理由として想定されている(「ビーディーニュース24ドットコム」紙3月30日)。他方、実態としては、労働人口の製造業への移行が進んでおらず、依然として農業が雇用の主要な受け皿であるバングラデシュの構造が明らかになった。
一方で、ポジティブな傾向としては、女性の労働参加率(注2)が42.67%に達し、前回調査時の36.3%から6ポイント以上の大幅な上昇をみせており、女性の社会進出が進んでいることが挙げられる。また、15歳から29歳までの若年労働人口が2,682万人と、前回調査時の2,010万人から増加しており、若年層の労働者が豊富であることも明らかになった。
(注1)与えられた仕事が労働者のスキルを使わないものである状態や、フルタイム勤務をしているにもかかわらず、パートタイムで働いている状態などを指す。
(注2)本調査においては、15歳以上の人口のうち、就労している、もしくは求職している人の割合。
(薄木裕也)
(バングラデシュ)
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