2023年の世界貿易量を前年比1.7%増に上方修正、WTO発表

(世界)

国際経済課

2023年04月07日

WTOは4月5日、世界貿易見通し外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表し、2023年の世界貿易量(輸出入平均)は前年比1.7%増で、前回の10月予測(1.0%増)から上方修正した(添付資料表参照)。2024年の世界貿易量は、経済成長率の回復に伴い、3.2%増加する見込み。しかし、地政学的な緊張の高まりや世界的な食料危機、金融市場の不安定化などの下振れリスクにより、予測値は通常よりも不確実だと指摘している。

WTOは2022年の世界貿易量の推計値も発表した。前年比2.7%増で、前回予測(3.5%増)を下回った。2022年4月にロシアのウクライナ侵攻が貿易に与える影響をまとめた報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで予測した2.4~3.0%増の範囲内に収まり、各国・地域が競合する貿易圏に分断する最も悲観的なシナリオ(0.5%増)は回避したと、WTOは評した。しかし、「長期的には経済成長を阻害し、生活水準低下を招く脅威は残る」と警鐘を鳴らしている。

2023年予測の上方修正には、中国のゼロコロナ政策緩和に伴い、繰り延べ需要が解き放されるとの期待が反映された。他方、同年の世界貿易量伸び率は2010~2022年の平均伸び率2.6%増を下回る水準で、ロシアのウクライナ侵攻や、継続する高インフレ、各国・地域の金融政策の引き締め、金融市場の不透明感を押し下げの要因に挙げた。

2023年の輸出量の伸び(予測値)を地域別にみると、北米が3.3%増と最も高く、次いでCIS(2.8%増)、アジア(2.5%増)、欧州(1.8%増)が続いた。対して、輸入量はCISが14.9%増の2桁増となり、アフリカ(5.6%増)、中東(5.5%増)が高い伸びを示した。輸出量の伸びが高かった北米、欧州では、輸入量の伸び率はそれぞれ0.1%減、0.6%減と、2020年以来のマイナスに転じた。輸入量は高インフレによる国内需要の減退、一次商品価格の高騰による輸出収入の減少を背景に、2022年第4四半期(10~12月)以降、多くの地域で前年に比べて減少傾向にある。

WTOのンゴジ・オコンジョ=イウェアラ事務局長は「貿易は引き続き世界経済の回復の力となっているが、2023年も外部要因による圧力にさらされる」と前置きした上で、「政府にとって、貿易分断化や貿易に対する障壁の導入を避けることの重要性が増している」と述べた。

(田中麻理)

(世界)

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