エネルギー会社EnBW、2028年までの石炭・褐炭火力発電の停止を視野に

(ドイツ)

ミュンヘン発

2023年04月04日

ドイツ南西部バーデン・ビュルテンベルク州に本社があるエネルギー会社EnBWは3月27日、条件が許せば、2028年に石炭・褐炭火力発電を全て停止すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

ドイツは脱炭素を目指す一環として、2020年8月に脱石炭法を施行。遅くとも2038年までに石炭・褐炭火力発電所を全廃するとして、補償や廃止のための入札を行い、段階的な脱却を図っている。また、現政権は連立協定書の中で、全廃の時期について「理想的には2030年」と前倒しを表明している。他方、ロシアによるウクライナ侵攻の影響を受けて、2022年に停止中の石炭・褐炭火力発電所の再稼働のための法改正もなされた(2022年9月27日付地域・分析レポート参照)。

EnBWは2028年までに石炭・褐炭火力発電を停止する条件として、連邦政府が(1)再生可能エネルギー導入を進めること、(2)送配電系統を整備すること、(3)必要なガス・水素インフラを整備することを挙げている。

石炭・褐炭火力発電停止に向けた対策として、EnBWはまず、石炭・褐炭火力発電を天然ガス火力発電に変更し、2030年半ばには天然ガスを二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロのカーボンフリーな気体燃料(水素など)に転換していく。EnBWは既にバーデン・ビュルテンベルク州内の3つの石炭発電所〔アルトバッハ・ダイツィザウ(Altbach/Deizisau)、ハイルブロン(Heilbronn)、シュツットガルト・ミュンスター(Stuttgart-Münster)〕で天然ガス移行を進めている。石炭から天然ガスへの燃料変更でCO2排出量を半分以上減らせるという。2035年までにはグリーン水素(注)に転換する。EnBWは3石炭火力発電所の燃料変更プロジェクトに合計約16億ユーロを投資する。

もう1つの対策は再エネの推進だ。EnBWの2022年末の発電設備容量に占める再エネ割合は41.7%(5,444メガワット)。うち陸上風力が7.9%、洋上風力が7.5%、太陽光が6.4%を占める。2025年末までに発電設備容量に占める再エネの割合を5割以上にすることを目指す。2021~2025年に総額140億ユーロを投資、うち約75%は2023~2025年に、再エネおよび電力網の整備に振り分ける。EnBWは3月、ドイツ最大級の洋上風力施設の建設を最終決定している(2023年3月27日記事参照)。水素関連の各種プロジェクトにも積極的に関与していく。

EnBWは2035年までにスコープ1、2でのカーボンニュートラル達成を目標に掲げる。中間目標として、2027年までにCO2排出を2018年比約5割削減、2030年までに約7割削減するとしている。

(注)再エネ由来の電力を利用し、水を電気分解して生成される水素。製造過程でCO2を排出しない。

(高塚一)

(ドイツ)

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