ジェトロ、中国経済とカーボンニュートラルの動向に関するセミナー開催

(中国、日本)

上海発

2023年04月05日

ジェトロは329日、「2023年中国の経済およびカーボンニュートラルの最新動向」セミナーを開催した。第1部では、中国経済の展望と第14期全国人民代表大会で示された経済政策について、対外経済貿易大学国際経済研究院の西村友作教授、上海社会科学院世界経済研究所国際投資研究室の孫立行主任・教授を講師に迎え、講演が行われた。第2部では、中国のカーボンニュートラルに関する動向と企業の事例紹介に関し、復旦大学環境経済研究センターの李志青主任、杭州瑞欧科技(REACH24)工業化学品事業部の張航法規技術エンジニア、浙江吉利控股集団の張偉ダブルカーボンビジネスソリューションディレクターを講師に迎えた。

1部では、まず西村氏が新型コロナウイルス禍で露呈した中国の構造的課題として、人口と不動産投資、地方財政の連動性が経済成長に与える影響を解説。約6兆~8兆元(約114兆~152兆円、1元=約19円)に上ると言われる超過貯蓄の存在が2023年の消費の原資となり、経済成長に資する可能性を指摘した。超過貯蓄は高所得者層に偏重しており、サービス消費の増加が見込まれるとの見解を示した。孫氏は「中国経済が高度成長から質的発展となるものの、改革開放のスタンスは変わらない」と強調したほか、「外資系企業は双循環戦略で重要な主体」と指摘した。また、日中間の経済協力分野として、Z世代が推進力となるEC・デジタル経済、医療美容・ヘルスケア、金融保険、グリーン低炭素・グリーンエネルギー分野を挙げた。参加者からは、「中国の人口動態や貯蓄の状況の説明はほかにはなく、非常に参考になった」「今後の中国ビジネス展開に役立った」などといったコメントが寄せられた。

2部では、李志青氏が中国で発展するグリーンファイナンスに関して、体系的整理と制度の詳細について解説したほか、グリーン発展に向けた資源配分・リスク管理・市場価格設定などの機能や地方でのパイロットプロジェクトなどを紹介した。張航氏は、中国企業が行っている先進的なカーボンニュートラルに対する取り組み事例について、張偉氏は、吉利汽車によるデジタルを活用したサプライチェーンの排出量把握・排出削減支援などの先進的取り組みや当該取り組みを行うに当たっての課題やメリットなどを紹介した。参加者からは、「中国のカーボンニュートラルに関する取り組みを体系的に紹介するセミナーは見たことがない」「グリーンファイナンスは再認識すべき政策で、今回のセミナーで理解が深まった」などのコメントが寄せられた。

炭素排出量が世界で最も多い中国で、2030年のカーボンピークアウト、2060年のカーボンニュートラルの達成に向けた民間企業の積極的な取り組みは、今後の日本企業のビジネス戦略に参考となるだろう。

写真 セミナーの様子(ジェトロ撮影)

セミナーの様子(ジェトロ撮影)

(神野可奈子)

(中国、日本)

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