ASEAN主要国のインフレ、ピーク越えとみられるも依然高水準

(ASEAN、シンガポール、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ラオス、カンボジア、ミャンマー、ブルネイ)

アジア大洋州課

2023年04月05日

多くのASEAN主要国で、インフレは2022年後半にピークに達したとみられるが、依然高い水準で推移している。2月の消費者物価指数(CPI)上昇率(前年同月比)はフィリピンで8.6%と、3カ月連続で8.0%超の高水準を記録した(添付資料表参照)。シンガポールとインドネシアは2022年9月のピーク時ほど高くはないが、5~6%台で推移している。マレーシアとベトナムはそれぞれ3.7%、4.3%だったほか、タイも3.8%で13カ月ぶりの低水準となった。

フィリピンではCPI上昇率がわずかに下落した一方、コアインフレ率(注)が伸びた(添付資料図1参照)。中央銀行は、旺盛な国内需要と長引く供給制約が広く価格上昇を招いたと指摘する。シンガポールでは幅広い品目で価格が上昇しており、コアインフレ率は5.5%と高い。金融管理局(MAS)は2023年第1四半期(1~3月)も5%超えの高水準が続くと予測する。マレーシアでもコアインフレ率は3.9%と、過去の平均を上回る水準で推移している。中銀はCPIとコアインフレ率について、需要とコストの両面からのインフレ圧力により、緩やかに上昇し続けると予測する。

2022年に各国の中銀はインフレ抑制に向けて段階的に政策金利を引き上げてきたが、2023年以降、政策金利を据え置く、または引き下げる動きが見え始めている(添付資料図2参照)。マレーシア中銀は経済減速への懸念を理由に、直近の2回の金融政策会合で政策金利を据え置いた。引き続き連続利上げの経済への影響を精査するとしている。インドネシア中銀も同様に、直近2回の理事会(金融政策決定会合)で政策金利を据え置いた。コアインフレ率が目標レンジ(2~4%)内で推移する中、現状の政策金利で十分だとした。また、ベトナム国家銀行(中銀)は3月15日以降、利下げに踏み切った。他方、タイ中銀は3月29日、インフレ上昇リスクに対応するため5会合連続で利上げを実施した。ただし、エコノミストの間では、利上げはこれで終了し、年内は1.75%を維持するとの見方が強い。

(注)全体から物価変動が大きい項目を除いた指数で、物価の基調を捉えるための指標として利用される。国によって計算方法が異なる。

(山口あづ希)

(ASEAN、シンガポール、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ラオス、カンボジア、ミャンマー、ブルネイ)

ビジネス短信 419acd78976ad485