希少鉱物への規制が激増、市場への影響懸念、OECD分析
(世界)
国際経済課
2023年04月18日
OECDは4月11日、希少鉱物の貿易動向や輸出規制をまとめたレポートを発表した。希少鉱物の貿易量が増加する中、希少鉱物に関する世界の輸出規制件数は過去10年で5倍以上に増え、輸出全体の1割が規制対象と報告した。
蓄電池や風力発電などグリーン経済への移行で重点的に使用される希少鉱物27種について、OECDが分析した。2017~2019年の希少鉱物の貿易量は2007~2009年比で38%増加したという。中でも、リチウムは5倍超と最大の伸び(438%増)を記録し、生産量も約3倍に達した。コバルトやグラファイト、マンガンなどの貿易量も、希少鉱物全体の平均伸び率を上回る増加を記録している。
希少鉱物に対する輸出規制は2009年1月末に2,518件だったが、2020年12月には1万3,102件にまで増加した。増加の内訳では輸出税が最多で、輸出許可手続きや輸出禁止措置が続く。輸出税が多い理由について、OECDは「輸出数量規制と異なり、輸出税はWTOで一般的に禁止されていないことが関係しているのではないか」と指摘している。
現存する輸出規制の構成比を国・地域別にみると、中国が19%を占める(注)。同国の2020年の輸出規制は2009年比で9倍に増えた。中国は、生産が一部の国・地域に集中する10種類の重要な原材料のうち、レアアースやグラファイトなど6種類の希少鉱物で、世界の生産量上位3カ国・地域にランク入りする。インド(同比14%)やロシア(6%)、アルゼンチン(6%)、コンゴ民主共和国(6%)も多くの規制を採用している。なお、コバルトについては、コンゴ民主共和国が全世界で69%の生産能力を有しており、世界の貿易量の70%以上が規制を受けている。同割合は希少鉱物の中で最大となっている。
OECDは、輸出規制が「希少鉱物の国際市場で無視できない役割を果たし、希少鉱物の入手可能性や価格に影響している」との懸念を表明した。OECD貿易総局のフランク・ファン・トンゲレン部長(分析担当)は、未開発の埋蔵鉱物が多く存在しており、サプライチェーン強化の一環として「多元化戦略」は重要との見方を示している(通商専門誌「インサイドUSトレード」4月11日付)。
OECDは、鉱物ごとに各国・地域の輸出規制の有無や生産・埋蔵量、貿易動向をまとめたデータベースを公開している。
(注)希少鉱物を含めた、OECDが指定する全ての産業向け原材料への輸出規制が対象。
(藪恭兵)
(世界)
ビジネス短信 35b3eafde8af0f1d