経済危機を乗り越える、小売業の経営戦略に関して識者が議論
(スリランカ)
コロンボ発
2023年04月05日
スリランカ小売業協会は4月1日、「小売業の再定義」をテーマとするセミナーを開催した。経済危機を通じて小売業界が直面する課題を取り上げるとともに、新たなトレンドの活用や経済危機の克服について、小売業界を専門とするコンサルタントや量販店の経営者などの識者が議論を交わした。
生活費の大幅な高騰を背景にした価格設定や、消費者行動への対応などの戦略について検討した「物価上昇期における価値の提供」をテーマにしたパネルディスカッションでは、登壇者より次の課題が指摘された。
- 物価の高騰により、消費者による購買行動が変化
- 高インフレの結果、輸送費や包装費などの経費や従業員の賃金が増加
- 原価の大幅な上昇と資本コストの上昇により、運転資金需要が増加
- 外貨流出防止を目的とする輸入規制により、小売業者が提供する商品数が減少
- エネルギーコストと物流コストが急騰し、光熱費上昇による店舗運営へ打撃
- 消費者がオンライン・チャネルに移行しており、店舗への来客数が減少
その上で、スリランカの小売業者が現在の厳しいビジネス環境を乗り越えていくため、次の対応策が提起された。
- 地元の消費者の実態に合わせた品ぞろえ
- サプライヤーとの価格交渉と代替調達の開発
- 店舗運営と資本の効率化を図り、コストの構造的な転換
- 購買意欲を高める重点品目への集中的な販売促進活動
- データおよび価格弾力性に基づく、カテゴリーや製品バリエーションに応じたきめ細かな価格設定
- 異なる価格帯での商品展開
- 効率性向上に向けた、商品規格の変更
- 数量変動や突発的な混乱に対応するサプライチェーンの改善
- 適切な分析を通じた、収益効果が実証された成功事例の優先的な採用
このほかのセッションでは、テクノロジーやアプリケーションなどを活用したマーケティングや店舗運営の改善、新型コロナウイルスの流行や経済危機からの教訓、スリランカにおける小売業の将来などについて議論が行われた。
植物由来成分の化粧品を販売するスパ・セイロンの創業者であるシャリン・バラスリヤ氏は「以前は外国人観光客に依存していたために、新型コロナウイルスの流行により海外からの渡航が制限された結果、自社の事業が深刻な影響を受けた」と述べた。一方で、「ターゲットとなる顧客を自国の消費者に転換したことで、短期間で急速に業績を回復した」と説明した。加えて、新たにソーシャルメディアを通じたマーケティングの強化にも取り組んだ点を紹介した。
セミナーの様子(ジェトロ撮影)
(ラクナー・ワーサラゲー、大井裕貴)
(スリランカ)
ビジネス短信 2088a01055242273