鉱業関連法改正案に業界の批判強まる

(メキシコ)

メキシコ発

2023年04月17日

メキシコ政府は3月28日、鉱業法、国家水資源法、エコロジー均衡環境保護一般法、廃棄物防止総合管理一般法の改正案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を国会に送付した。法案の趣旨説明によると、一連の改正は、地下に眠る鉱物資源や水資源の統轄権を国に取り戻し、鉱業コンセッションや鉱業用途の水利用権の付与・維持・取り消しのプロセスを規制し、健全な環境や健康、水を享受するという人権を保護し、国の天然資源と先住民の土地に関する権利を保全するという目的だ。一連の改正案の主要な内容は添付資料のとおり。

これに対し、メキシコ鉱業会議所(Camimex)は4月12日、記者会見で同改正法案への強い懸念を表明した。法案は鉱業の実態を知らない素人が作成したとし、非現実な内容が多く含まれていると指摘する。例えば、コンセッション期間が50年から15年に短縮された場合、15年では資源探査のみで終了し、掘削の許認可取得や施設建設などを行う時間もないという。鉱業用途の水利用権の期間が5年というのも非現実的と指摘する。事業者が開発権を有するのは産出が想定される主目的の鉱物に限定し、副産物についての権利を認めないというのも、多くの鉱石が他の鉱物を含有するかたちで産出される現実を認識していないと主張する。また、国営企業には無期限で鉱区を割り当てるというのは、民間事業者との間の明らかな差別的待遇となり、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)など国際協定にも反すると強調する。さらに、既存コンセッションの取り消し事由を拡大し、国に多くの裁量権を与えるのは、法的不安定性が増すと指摘する。同法案がこのまま可決された場合は、毎年40億ドル規模の投資が失われ、41万7,000人に及ぶ雇用の3割が失われ、自動車産業も含め70の関連業種に悪影響を与えると強調する(4月13日付主要各紙)。

これに対し、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領は4月13日の記者会見で、改正は大切な水資源を企業から守る目的とし、過去30年に及ぶ腐敗した新自由主義経済の下でコンセッションが乱発されたため、今後仮に半分のコンセッションを取り消したとしても、企業は十分に生産を続けて利益を上げられるとしている(大統領府4月13日付記者会見録外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

AMLO政権下で鉱業への外国投資は後退

AMLO大統領は政権発足当初から鉱業に厳しい姿勢を貫いており、現政権下ではコンセッションが1件も付与されていない。エンリケ・ペニャ・ニエト前政権下では5,396件、フェリペ・カルデロン前々政権下では1万2,864件が付与されていた。メキシコへの同分野の外国直接投資も減少している。経済省のデータによると、カルデロン政権下の鉱業(石油・ガスを除く)への対内直接投資額は年平均21億2,280万ドル、ペニャ政権下では同16億5,960万ドルだったが、AMLO政権下では11億4,380万ドルまで落ち込んでいる。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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