財務省が国会に提出する新たな財政均衡策案を発表

(ブラジル)

サンパウロ発

2023年04月12日

ブラジルのフェルナンド・アダジ財務相は3月30日の同省公式記者会見において、公共支出を抑え、政府財政の均衡を目指すことを目的に新たな財政均衡策案を発表した。

ブラジルでは2017年以降、歳出制限規則の下で連邦政府の歳出伸び率を前年のインフレ率以下に抑制し、公共支出の上限を設けることで財政均衡を図ってきた。ただ、2020年以降は新型コロナ対策のため、その制限を緩和せざるを得なくなった(添付資料表1参照)。アダジ財務相は同相就任前の2022年12月13日付の政権移行チーム記者会見で、「現在の財政均衡策は実行するための信用性に欠ける。われわれは実行可能な、信用できる財務緊縮策案を(国会に)提出したい」と述べていた経緯がある。

新たな財政均衡策案の内容は、政府の歳出伸び率を過去12カ月間の歳入増加率の70%以内に制限するもの。また、歳出伸び率は0.6%以上2.5%以下でなければならないという制約を設ける意向だ。たとえば、歳入増加率が5%の場合、伸び率は70%に相当する3.5%ではなく、2.5%が上限となる。一方、歳入が増加しない場合でも伸び率は0.6%になる。

また、各年の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の目標値も新たに設定する。最新の中央銀行の週次レポート「フォーカス」の予測では、2022年まで赤字になっているものを、新たな財政緊縮策により2023年はGDP比で0.5%の赤字、2024年は均衡、2025年は0.5%の黒字、2026年は1%の黒字(添付資料表2参照)にする。ここへ、上下0.25ポイントの許容範囲を設け、それぞれの目標が達成されない場合には、翌年の歳出伸び率を過去12カ月間の歳入増加率の70%ではなく、50%以内に制限する。

アダジ財務相は3月30日の同省公式記者会見で「増税への懸念が多いことは承知しているが、新たな税を設けることや既存の税率を引き上げる予定はない。ただし、不当な税制優遇を受けている分野や税金申告側の不正行為の場合では、納税が適切に行われる様に取り組む必要がある。今年は諸税に関する様々な対策措置を国会に提出したい」と意気込みを見せた。

ブラジル銀行連盟(FEBRABAN)のイザック・シドネイ会長は3月30日付の同連盟公式サイトで、「詳細は確認する必要があるが、財務省が発表した提案は公的債務の問題を是正する試みとして1つの進展だ」と新たな財政緊縮策を評価している。一方、上院議会に属し、政府予算などを監査する独立税制監査院(IFI)のビルマ・ピント院長とアレシャンドレ・アンドラーデ職員は、ブラジルを代表するシンクタンクのジェトゥリオ・バルガス財団(FGV)公式サイト(3月31日付)への寄稿で「(今回の財務省の提案では)基礎的財政収支の黒字化への道のりは歳入を増加できるかどうかにかかっている。(国家が適切な債権を管理することにより)一時的な歳入を確保し、財政状況を短期的に改善した場合でも、長期的に機能し続けるとは限らない」と述べ、新たな財政均衡策への懸念も見せている。

(エルナニ・オダ)

(ブラジル)

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