ジェトロ、米輸出管理の最新動向に関するウェビナーを開催、元商務次官補が登壇

(米国、中国、日本、ロシア)

米州課

2023年04月14日

米国の輸出管理制度が変貌を遂げている中、ジェトロは413日、米国商務省産業安全保障局(BIS)の元商務次官補で、現在エイキン・ガンプ法律事務所のパートナーを務めるケビン・ウルフ氏を講師に迎え、ウェビナーを開催した。「米国の輸出管理の最新状況と国家安全保障の概念の変容」と題する本ウェビナーの参加登録者数は2,700人を超え、当日も輸出管理を担当する企業関係者などが多数参加した。

写真 ウルフ氏の講演の様子(右は若松勇ジェトロ調査部長)(ジェトロ撮影)

ウルフ氏の講演の様子(右は若松勇ジェトロ調査部長)(ジェトロ撮影)

ウェビナーの中で、ウルフ氏は「米国の輸出管理は、自分が商務省に在籍していた時より厳しくなっている」と指摘し、戦力増強技術を規制するという点で、米国は中国とロシアに対して戦略的管理に回帰しつつあるとの見解を述べた。他方、不拡散という共通の目的の下に機能していた国際レジームは、ロシアが参加しているため、十分に機能しなくなっていると指摘した。

また、2022年10月に公表された対中半導体輸出規制(2022年10月11日記事参照)について、半導体の開発・生産に対する米国人の支援も規制の対象になったことが、これまでの輸出管理からみて「新しい」と述べた。一方で、同規制は、中国とのデカップリングを計画したものではないと強調。その理由として、半導体の成熟した技術は規制の対象に含まれておらず、バイデン政権がグローバル・サプライチェーンに影響を及ぼさないように留意していることを挙げた。

米国の輸出管理に関する2023年の注目点については、「従来の国際レジームの外で、どれだけ複数国間(plurilateral)の取り組みを実施できるかだ」と述べた。例えば、既存の国際レジームは、中国固有の問題や現代の国家安全保障上の懸念に対処するように設計されていないとして、同盟国・友好国間で新たなレジームを創設することが必要だと主張した。

質疑応答のセッションでは、商務省が管轄する輸出管理規則(EAR)のエンティティー・リスト(EL)に掲載されている企業の子会社への輸出可否を問われ、「場合による」と回答。「商務省は、輸出製品がEL掲載の親会社に流れる可能性があるかに着目している。子会社が、親会社がEL掲載に至った理由の活動に関与しているかどうかも重要だ」と述べた。また、ELへの掲載基準を問う質問には、「商務省と国防総省が協働しながら、米国の国家安全保障に照らして判断している。トランプ政権下では、非常に広範な理由で、さまざまな事業体がELに掲載された。バイデン政権下では、掲載の理由がより明確になっている」と応じた。

ジェトロは4月20日(木)~7月20日(木)まで、本ウェビナーのアーカイブ動画を配信する予定。

(片岡一生)

(米国、中国、日本、ロシア)

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