韓国政府、インフレ削減法のEV税額控除の規則案を歓迎

(韓国、米国)

ソウル発

2023年04月07日

韓国産業通商資源部は、3月31日に米国財務省が発表した「インフレ削減法」(IRA)に基づくグリーンビークル(注1)への税額控除に関する規則案(Notice of Proposed Rulemaking)に対し、(1)バッテリー部品の北米での製造・組み立て比率(注2)、重要鉱物の米国および米国とのFTA締結国での抽出比率や加工比率(注3)を算定する場合、部品・鉱物のそれぞれではなく、全体の部品・鉱物の価値を基準として判断することとした点、(2)正極活物質(注4)など構成材料(constituent materials)の製造過程がバッテリー部品の範囲に含まれない点(注5)、(3)自由貿易協定(FTA)締結国の範囲の拡大を検討(注6)する点など、韓国政府や産業界の意見の相当部分が反映されたとして、歓迎した(2022年11月8日記事2023年4月3日記事参照)。

李昌洋(イ・チャンヤン)長官は「これまで韓国政府は、米国に進出した韓国企業が困難に直面することのないよう、友好的な方向での配慮を要請してきた」と述べ、「政府としては、IRAが韓国企業にとって新たなビジネスチャンスとなるよう積極的に支援していく」と強調した。

「朝鮮日報」(4月3日)は、韓国のバッテリー業界関係者による「不確実性が一部解消された」とのコメントを掲載している。これにより、国内で正極材や負極材を生産するLG化学、ポスコフューチャーエム、エコプロBMのような企業は、国内からの製造拠点の移転を免れる見込みとなった。他方、同規則案では、2025年から「海外の懸念集団」が採掘、加工、リサイクルした鉱物を使用することが禁じられるため、バッテリー原料のうち、中国からの輸入が80%を超える水酸化ナトリウム、コバルト、黒鉛などについて、「今後1年~2年以内に中国以外の地域とのサプライチェーンを構築しなければならない」と述べている。

(注1)バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)の総称。

(注2)北米で50%以上を製造・組み立てをすることで、1台当たり3,750ドルの税額控除を受けることができる。なお、2029年までにこの比率は100%となる。

(注3)米国または米国とのFTA締結国で40%以上を抽出または加工することで、1台当たり3,750ドルの税額控除を受けることができる。なお、2027年までにこの比率は80%となる。

(注4)電池の正極で用いられる活物質。コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウムなど。

(注5)これにより北米でバッテリー工場を操業する韓国企業は部品要件を満たすことが容易になる。

(注6)規則案では、「The NPRM also details a proposed set of principles for identifying the set of countries with which the United States has a free trade agreement in effect, since this term is not defined in statute. This term could include newly negotiated critical minerals agreement. 」と規定。

(当間正明)

(韓国、米国)

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