自動車部品キルヒホフ、アルセロール・ミタルと自動車向け低炭素鋼材で協力

(ドイツ、ルクセンブルク)

ミュンヘン発

2023年03月15日

ドイツの自動車部品メーカーのキルヒホフ・オートモーティブは33日、鉄鋼大手アルセロール・ミタル(本社:ルクセンブルク)と自動車向け低炭素鋼材の開発で協力するための覚書(MOUを締結したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

アルセロール・ミタルがリサイクル鋼鉄と100%再生可能エネルギーで生産した鋼材を、キルヒホフが車体部品などに活用する。従来の生産方法の鋼材に比べて、ライフサイクル全体で二酸化炭素(CO2)を7割削減できるという。アルセロール・ミタルは1年以上前から、スペイン・セスタオ工場で、板状の低炭素鋼材の生産を開始している。

キルヒホフによると、低炭素鋼材は通常のものに比べて、価格は相当高いものの、自動車メーカーなどのカーボンニュートラルの動きを受けて、価格差は問題にならなくなってきているという。2030年までに、低炭素鋼材の供給が需要に比べ最大2,000万トン不足するとの見方もある。

キルヒホフ自身は2045年のカーボンニュートラルを目指し、2030年までに2019年比で、スコープ1(注)およびスコープ2の温室効果ガス(GHG)排出量を8割減らすことを目標に掲げる。また、2022年からスコープ3GHG排出の捕捉も始めている。同社によると、同社のCO2排出の9割は現在採用している、従来の生産方法の鉄鋼とアルミニウムによるものだという。

また、キルヒホフは「レスポンシブル・サプライチェーン・イニシアチブ(RSCI外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」の創設メンバーでもある。RSCIは、ドイツ自動車産業連合会(VDA)が202110月に自動車関連企業14社と発足させたもので、自動車産業のサプライチェーンにおける環境保護や人権擁護などの持続可能性向上を目指す団体だ。

キルヒホフ・オートモーティブは、乗用車・商用車向け車体・部品大手。売上高は155,000万ユーロ(2022年)で、従業員数は約7,400人(2021年末)。フォルクスワーゲン(VW)、BMW、メルセデス・ベンツ、ホンダ、スズキなどと取引があり、2021年に世界で生産された乗用車・小型商用車の31%に同社の部品が搭載された。ドイツに限定すると、その割合は9割まで高まるという。日本では神戸に営業拠点がある。

(注)温室効果ガス(GHG)排出量の算定、報告の基準の1つ。そのスコープ1では、事業者自らによるGHGの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)を対象にする。スコープ2は、他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出。スコープ3では、スコープ1とスコープ2以外の間接排出(事業活動に関連する他社の排出)にまで踏み込む。

(高塚一)

(ドイツ、ルクセンブルク)

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