GDP成長率予測、2023年を1.1%、2024年を1.5%に微修正

(スイス)

ジュネーブ発

2023年03月27日

スイス連邦経済省経済事務局(SECO)は3月16日、経済見通しを発表し、実質GDP成長率(スポーツイベント調整後:注)について、2022年12月の前回予測とおおむね変わらないとの見方を示しつつ、2023年を1.1%(前回予測1.0%)、2024年を1.5%(同1.6%)と、それぞれ微修正した(プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、添付資料表参照)。

2022年第4四半期(10~12月)のGDP成長率は横ばいだった。経済情勢の影響を受けやすい産業部門は厳しい国際環境に阻まれ、財貨の輸出は縮小した一方で、堅調な雇用を背景に、内需は拡大した。最近の景況感調査の結果にばらつきはあるものの、最新の指標は、2023年第1四半期(1~3月)のスイス経済が堅調に推移していることを示している。

国際経済の状況は2022年12月の前回予測時点よりもやや明るい。中国経済は新型コロナウイルス対策のゼロ・コロナ政策の終了後、大きく回復している。さらに、欧州のエネルギー情勢はここ数カ月で緩和している。しかし、インフレ圧力は国際的に高止まりしており、消費者物価指数(CPI)から価格変動の大きい食品やエネルギーを除いたコア指数の上昇率(コア・インフレ率)が主要先進国で予想ほど低下していないため、さらなる金融引き締めや世界的な需要の減速が生じる可能性が高まりつつある。

SECOはスイス国内でもCPI上昇率(インフレ率)は短期的に高まることを予想し、2023年のインフレ率を2.4%と、0.2ポイント上方修正した。個人消費については、堅調な労働市場と名目賃金の上昇によって今後、数四半期にわたって緩やかに成長すると予測している。一方で、投資の伸びは現在の環境では平均を下回るとしている。

こうした背景を基に、SECOは2023年のGDP成長率予測を0.1ポイント上方修正し、景気後退には至らないとの見方を示した。今回の予測も前回予測と同様、今冬、翌冬ともに広範囲の生産停止を伴う深刻なエネルギー供給不足が生じないシナリオを前提としている。他方、ガスや電気料金の価格は引き続き記録的な高さで推移することが見込まれる。

SECOは、2024年末までに欧州のエネルギー情勢が安定し、世界的にインフレ率が徐々に低下、需要はやや回復すると予想しつつも、2024年の経済成長率見通しは前回予測から0.1ポイント引き下げた。2024年のインフレ率予測は1.5%と前回予測のままとした。景気の減速が労働市場に波及するにはタイムラグがあるとし、失業率は、2023年は2.0%、2024年は2.3%と予測した。

(注)スイスには、国際オリンピック委員会(IOC)、国際サッカー連盟(FIFA)、欧州サッカー連盟(UEFA)など主要国際イベントの本部があるため、イベント開催年に放映権収入がGDPを押し上げ、翌年はマイナスに作用するのが通例。このため、SECOはこの影響を除いた調整値を別途算出している。

(竹原ベナルディス真紀子)

(スイス)

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