新型コロナへの政府対応の是非を総括、白書を発表

(シンガポール)

シンガポール発

2023年03月14日

シンガポール政府は3月8日、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)流行に対する政府の対応の是非を総括した白書(注)を発表した。白書は、将来の新たなパンデミックが発生した場合により効果的な対応ができるよう、今回の政府対応を見直し、教訓を残すことが狙い。

同国では2月13日以降、国内外の感染状況の沈静化を受け、残っていた感染防止策をほぼ撤廃し、エンデミック(一定期間で繰り返し流行する)へと移行している(2023年2月15日記事参照)。政府は今回の新型コロナ関連の対応で、(1)官民連携で医療提供体制を維持、(2)ワクチンの確保と普及、(3)サプライチェーンの確保、(4)企業支援と雇用の保護、(5)弱者への生活支援、(6)学校教育の継続、(7)国民への広報と信頼獲得、(8)官民での国を挙げた対応、を評価した。政府はサプライチェーンについて、新型コロナの感染ピーク時においても製造活動と輸出を継続するとともに、供給不足の懸念が高まった際にも輸出規制を行わなかったと強調した。

一方、反省点について、(1)外国人低熟練労働者の感染拡大、(2)水際対策、(3)マスク着用義務の遅れ、(4)感染者の追跡アプリの投入、(5)事業者に対する複雑な感染防止策、(6)エンデミック移行に伴う混乱、を挙げた。政府は白書で、今回の教訓の1つとして、2003年の新型肺炎(SARS)の経験に基づいた対応策をとったことで、SARSとは異なる新型コロナの感染パターンに当初、十分対応できなかった点を指摘。その上で、感染対応にあたっては、「『過去の戦争を戦う』限界を認識し、変化し続ける状況に対して対応が遅れないようにするべきだ」と述べた。

政府は、今回の新型コロナ対応に当たって一部改善すべき点を認めた上で、「危機対応における(政府の)ガバナンスの質は全体的に高く、パンデミックに対する国家総力をあげた確固たる対応により、(住民の)生命と生活を守ることができた」と結論付けた。今回発表した白書の内容については、2023年3月中に国会で議論する予定。

(注)白書はシンガポール政府のサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますからダウンロードできる。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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