中国商標法改正草案のポイントについて、ジェトロなどがセミナー開催

(中国、日本)

知的財産課

2023年03月22日

特許庁とジェトロは33日、中国改正商標法の最新事情に関するセミナーをハイブリッド形式で開催した。会場から約20人、オンラインから約450人が参加した。

中国国家知識産権局(CNIPA)は113日に「中華人民共和国商標法改正草案(意見募集稿)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公表した(注)。セミナーでは、中国の商標法の動向に関心が高まっていることから、同法に詳しい専門家として、北京市永新智財律師事務所シニアパートナー・弁護士の沈春湘氏を講師に迎え、法改正の背景や条文分析について説明した。

中国では昨今、商標出願件数が急増している。世界知的所有権機関(WIPO)の「2022年世界知的財産指標報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」によると、2021年の中国での商標出願件数は約950万件に上り(2位の米国は約90万件)、世界全体の52%を占めた。また、2022年現在の商標出願件数は4,000万件を超えた(「新華網」2022712日)。

意見募集稿は現行法の全773条から10101条に拡充され、多岐にわたって変更されている。中でも日本企業が注目すべき改正点は以下のとおり。

意見募集稿第21条に、同一の商品または役務での同一商標の重複登録を禁止する規定を追加。

意見募集稿第22条で、悪意の商標出願に該当する具体的な状況を明確化。

意見募集稿第45条~第47条で、悪意のある商標登録について、自分の名義下に移転することを請求可能に。

意見募集稿第61条に、商標登録後5年ごとに使用状況の説明を必要とする規定を追加。

意見募集稿第83条で、悪意による商標登録が他人に損失を与えた場合の民事賠償責任を明確化。

セミナーで沈氏は、商標を「使用中」「使用計画段階」「防護標章」に分類するなどして細心の管理を行うことに加え、悪意の商標登録や商標権侵害に対しては、近年の商標民事訴訟の件数増加の状況や高額賠償事例を踏まえ、民事訴訟による損害賠償請求など積極的に対処することが重要と述べた。セミナーでは60以上の質問が寄せられ、非常に活発な質疑応答が行われた。

同改正法が施行されるまで数年かかる見通しで、ジェトロは今後も同改正に関するセミナーなど各種情報発信をする予定だ。

写真 講演の様子(ジェトロ撮影)

講演の様子(ジェトロ撮影)

写真 質疑応答の様子(ジェトロ撮影)

質疑応答の様子(ジェトロ撮影)

(注)国家知識産権局(CNIPA)は「中華人民共和国商標法改正草案(意見募集稿)」を公表し、一般向けに意見募集を行った。中国商標法は 1983 年の施行以来、過去に4度の改正(1993 年、2001 年、2013 年、2019 年)されており、今回の改正は第5次となる。直近の 2019 年改正が「悪意の商標出願対策」などに特化した一部改正だったため、全面改正となれば2013 年以来 10 年ぶりとなる。詳細はジェトロ作成のレポートPDFファイル(468KB)を参照。

(藤本海香子)

(中国、日本)

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