英エネルギー相、エネルギー自給率向上への優先事項に関し演説

(英国、ノルウェー)

ロンドン発

2023年03月08日

英国のグラント・シャップス・エネルギー安全保障・ネットゼロ相は3月1日、英国のエネルギー自給率の向上に関する演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを英王立国際問題研究所(チャタムハウス)で行った。

ロシアによるウクライナ侵攻以降、英国のエネルギー供給は混乱し、エネルギー料金の高騰が続いている。シャップス氏は、この状況がエネルギー供給を多様化、脱炭素化、国産化する計画を加速化させ、エネルギー市場を改革し、安価でクリーンなエネルギーの確保を目指すターニングポイントとなったとした。

エネルギー安全保障・ネットゼロ省の設立(2023年2月9日記事参照)は、現在のエネルギー政策に対する政府の明確な意図の表れと説明。担当大臣としての目的を以下のとおり説明した。

  1. 英国をエネルギー自立への道へ導くこと(エネルギー安全保障を実現すること)
  2. できるだけ早期にエネルギー料金を抑制し、消費者に安心感を与えること
  3. ネットゼロへの取り組みとして、エネルギーを脱炭素化し、気候安全保障を実現すること
  4. インフレの抑制、経済成長の促進、経済安全保障の実現のための役割を果たすこと

これら4つの目的は密接に関係し、それぞれが他の目的の成功にかかっているとして、新たな省では目的の各分野を横断し、専門知識を最大限活用するとした。

英国は洋上風力分野で世界の主導的立場にあり、当該セクターでは2030年までに9万人の雇用を創出する見込みと説明。次の最先端領域として浮体式洋上風力の開発を進めているとした。さらに、二酸化炭素(CO2)回収・貯留(CCS)、水素、石油・ガス生産の脱炭素化を通じ、民間投資と雇用の拡大、経済成長を実現するとした。併せて、原子力分野へのコミットメントも強調。ヒンクリーポイントC発電所の建設や、政府支出が決定したサイズウェルC発電所(2022年11月30日記事参照)を紹介するとともに、省再編に合わせ、英国初の原子力担当相のポストを創設し、アンドリュー・ボウイ氏を任命したことにも触れた。

ノルウェーと水素分野で連携強化

同じく3月1日に、同大臣はノルウェーとのCCSに関する覚書(MoU、注)の付属書に署名(シャップス氏スピーチ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますノルウェー政府プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。低炭素水素の製造、輸送、貯蔵に関する知識と経験の定期的な交換や、規格や認証の開発に向けた当局間の協力関係拡大を確認した。

(注)英国とノルウェーは2018年11月にCCSに関するMoUを締結している。

(菅野真)

(英国、ノルウェー)

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