IPCC、「急速かつ大幅な」温室効果ガス削減が必要と警鐘

(世界)

国際経済課

2023年03月22日

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は3月20日、第6次評価報告書(AR6)統合報告書の政策決定者向け要約(SPM)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公表した。世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて1.5度に抑えるためには、少なくとも2025年までに世界の温室効果ガス(GHG)の排出量を減少に転じさせ、2030年には2019年比で43%程度削減する必要があるとした。そのためには、急速かつ大幅で、ほとんどの場合緊急に(rapid, deep and, in most cases, immediate)GHGの排出削減が必要となるとした。評価報告書は2014年の第5次評価報告書(AR5)以来9年ぶりとなる。

AR6は「A:現状と傾向」「B:長期的な気候変動、リスク、および応答」「C:短期的な応答」の3項目で構成されている。それぞれのポイントは以下のとおり。

A.「現状と傾向」

  • 人間活動が主にGHGの排出を通して地球温暖化を引き起こしてきたことには疑う余地がなく、人為的な気候変動は、既に世界中の全ての地域において多くの気象と気候の極端現象に影響を及ぼしている。
  • 2021年10月までに発表された「国が決定する貢献(NDCs)」によって示唆される、2030年の世界全体のGHG排出量では、温暖化が21世紀の間に1.5度を超える可能性が高く、温暖化を2度より低く抑えることがさらに困難になる。

B.「長期的な気候変動、リスク、および応答」

  • 継続的なGHGの排出はさらなる地球温暖化をもたらし、気候変動に起因するリスクと予測される悪影響、および関連する損失と損害は、地球温暖化が進行するにつれて増大する。
  • 温暖化を1.5度または2度に抑制しうるかは、主にネットゼロの二酸化炭素(CO2)排出を達成する時期までの累積炭素排出量と、この10年のGHG排出削減の水準によって決まる。

C.「短期的な応答」

  • 資金、技術、および国際協力は、気候行動を加速させるための重大な成功要因だ。気候目標が達成されるためには、適応及び緩和の資金はともに何倍にも増加させる必要がある。

(渡邉敬士)

(世界)

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