欧州委の研究機関、廃プラ処理は焼却よりリサイクルを推奨する報告書発表

(EU)

ブリュッセル発

2023年03月03日

欧州委員会の共同研究センター(JRC)は2月20日、プラスチック廃棄物のリサイクルに関する環境面や経済性の観点からの評価報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公表した。報告書では、メカニカル・リサイクル(注1)、ケミカル・リサイクル(注2)といった廃プラスチックのリサイクル方法とエネルギー・リカバリー(注3)技術について、ライフサイクル評価(LCA)と標準的なライフサイクルコストに関する方法論などに基づいて評価を行った。廃プラスチックの最も推奨される処理方法を選ぶに当たっては、(1)加工による環境などへの影響を最低限に抑えながら、最大限に原材料を回収できるか、(2)廃プラスチック処理の流れの特性や必要な技術、(3)経済的な実行可能性が主な基準となるとした。

その結果、特に現時点ではメカニカル・リサイクルがされていない混合ポリオレフィン(注4)については、廃棄物の焼却やそれに伴う二酸化炭素(CO2)排出に起因する環境への負荷が、環境面での利点を上回るエネルギー・リカバリーよりも、リサイクルが推奨されるとした。窒素酸化物(NOx)など幾つかの汚染物質については、焼却施設からの放出が比較的に抑えられていることから、電力など多大なエネルギーを必要とするリサイクルより、エネルギー・リカバリーが優れている面もあるが、今後、クリーン・エネルギーが普及するにつれて、リサイクルの利点が大きくなるとした。また、経済性については、分析に必要なデータが現時点では少ないものの、全てのケミカル・リサイクル技術は2040年までに採算が取れるようになるとの見方を示した。

ケミカル・リサイクルの普及目指す化学工業部門は報告書を歓迎

欧州化学工業連盟(Cefic)は2月27日、同報告書は焼却処分よりリサイクルの方に利点が多いと証明し、特にメカニカル・リサイクルを補完する手段として、ケミカル・リサイクルの重要性を示したとの声明を発表した(Ceficのプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。欧州委が新たな包装・包装廃棄物に関する規則案を提案(2022年12月2日記事参照)するなど、EUとして廃棄物の削減への取り組みを強化することは、設備などに多大な導入コストが必要となるケミカル・リサイクルの普及に向けて必要な政策的インセンティブを創出し、同規則案で欧州委が実施立法によって定めるとしたリサイクル材の含有率の算定ルールをより明確なものとする主要な機会となると指摘。原材料の回収につながるリサイクルによる廃棄物処理は大きな重要性を持ち、その手法の1つのケミカル・リサイクルも他のリサイクル方法とともに、EUが目指す戦略的自律にとって重要だと強調。さらに、プラスチックや化学工業部門の化石燃料由来の原材料の使用削減にもつながるとして、ケミカル・リサイクルの普及への支援促進への大きな期待をにじませた。

(注1)廃プラスチックを粉砕、洗浄し、高温で溶融・減圧・ろ過などを行ってリサイクルすること。

(注2)廃プラスチックを化学的に分解し、化学製品の原料として再利用すること。

(注3)熱エネルギーを回収しながら、廃棄物を焼却すること。

(注4)ポリエチレン、ポリプロビレンといったオレフィン系の高分子化合物のこと。

(滝澤祥子)

(EU)

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