韓国LGエナジーソリューション、米アリゾナ州バッテリー工場への投資拡大、IRA税額控除要件受け

(米国、韓国)

ロサンゼルス発

2023年03月27日

韓国のLGエナジーソリューション(LGES)は3月24日、米国アリゾナ州クイーンクリークで電気自動車(EV)用円筒型バッテリーと蓄電システム用リン酸鉄リチウムイオン(LFP)パウチ型バッテリーの複合生産工場を建設すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。総投資額は55億ドル(約7兆2,000億ウォン)。

LGESは、EV用円筒型バッテリー工場建設には32億ドルを投じ、主に北米EVメーカー向けの2170型セルの生産を2025年から開始する計画。年間生産能力は27ギガワット時(GWh)。また、蓄電システム向けのLFPパウチ型バッテリー工場建設には23億ドルを投じ、2026年生産開始を目指している。年間生産能力は16GWh。

同社は2022年3月に、13億ドルを投資し、年間生産能力11GwhのEV用バッテリー工場をアリゾナ州クイーンクリークに建設し、2024年から生産を開始すると発表していたが、同年6月に米国の経済環境や投資環境を理由に工場建設の計画を再検討している、と報じられていた(ロイター2022年6月29日)。今回発表では、投資規模が4倍以上に拡大したかたちで、この理由について、LGESは「インフレ削減法(IRA)のEV税額控除要件を満たすため、EVメーカーから現地(米国)生産の高品質・高性能バッテリーへの要求が高まっているため」と説明している。

LGESは米国において、単独資本工場をミシガン州で、ゼネラルモーターズ(GM)との合弁工場をオハイオ州で運営している。さらに同社は、北米でのバッテリー生産工場への投資を加速しており、現在、GMとの合弁工場をテネシー州とミシガン州で、ホンダとの合弁工場をオハイオ州で(2022年10月18日記事参照)、ステランティスとの合弁工場をカナダのオンタリオ州で建設している。

米国アリゾナ州フェニックス近郊では、半導体やEVに関連した大型投資が相次いでおり、LGES以外にも、米国半導体メーカー大手のインテルが200億ドル(2021年9月30日記事参照)、台湾の半導体ファウンドリー(受託製造)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が400億ドルを投じて工場の建設を進めている(2022年12月8日記事参照)。こうした大型投資やそれに付随する関連企業の事業拡大や進出に伴い、アリゾナ州では技術系人材の維持・確保が課題となっている。今回のLGESによる投資拡大を受け、人材不足に拍車がかかることが想定される。

(永田光)

(米国、韓国)

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