フランス、再生可能エネルギー生産加速法を施行

(フランス)

パリ発

2023年03月23日

フランスで、再生可能エネルギー生産加速法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが3月12日に施行された。フランスにおける再生可能エネルギー(以下、再エネ)導入の遅れを取り戻し、2050年までに、太陽光発電の発電容量を100ギガワット(GW)超、洋上風力発電と陸上風力発電の発電容量をそれぞれ40GWまで増やす目標の達成を目指す。

具体的には、再エネ生産計画の策定プロセスの整備、行政手続きの簡素化、すでに人工化された土地の活用拡大、再エネ生産から得る利益の再分配強化の4つが柱となる。​

首相府の法律・行政情報局が運営するサイト「ビ・ピュブリック(Vie publique)」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(3月13日)によると、再エネ生産計画の策定プロセスについては、プロジェクトに関するパブリックコンサルテーションの実施後、市町村レベルで選定された再エネ生産候補地を、複数の市町村からなるコミューン間協力公施設法人が協議する。県に置かれる再エネプロジェクト調整官が、6カ月後に、候補地リストをまとめて各地域圏のエネルギー委員会に提出する。エネルギー委員会が、候補地が地域圏の再エネ導入目標達成に十分と認める場合は候補地が確定するが、承認されなければ、再エネプロジェクト調整官が市町村に新たな候補地の選定を要請する。

洋上風力発電については、海岸周辺自治体、国家海洋沿岸評議会、発電設備の設置候補地区から100キロ未満に位置する市町村との協議を通じ、政府が2024年に設置優先地区を設定する。​

行政手続きの簡素化については、再エネ発電に関する特定のプロジェクトと、それらの電力系統への接続・蓄電工事に対し、(希少)種の保全義務が免除される「公益上やむを得ない重大な理由」が制定される。国務院が、この免除の認定基準をデクレにより規定する。また、プロジェクトの訴訟に係るリスクを軽減するため、訴えを起こされたプロジェクト事業者が法的な不備を調整できる場合、(行政裁判所の)裁判官は事業者に、可能であれば調整を促し、プロジェクトの認可が取り消されることを避ける。訴訟により認可が取り消された場合のコストを補填(ほてん)するため、特別保証基金を創設する。​

道路や高速道路および線路に沿った土地、河川に沿った土地や海岸の荒れ地など、すでに人工化された土地などへの太陽光パネルの設置を促進する。また、既存の屋外駐車場のうち敷地面積が1,500平方メートルを超える大型駐車場には、敷地面積の半分以上に太陽光パネルの設置を義務付ける。新設または大きく改装された非居住用建築物(倉庫、学校、病院など)の屋根面積に占める太陽光パネルの割合を、2023年の30%から2027年の50%まで段階的に引き上げる。この義務は2028年から、既存の非居住用建築物にも適用が拡張される。​

再エネ導入に伴う利益再配分の強化については、プロジェクト事業者に対し、自治体が実施する(持続可能モビリティーの導入や省エネ改築などの)グリーン化プロジェクトや、フランス生物多様性事務局(OFB)の生物多様性保全プロジェクトへの資金供与を義務付ける。また、地元の消費者が事業者と再エネ由来電力およびガスの売買契約を容易に締結できるよう法的整備を行う。

(山崎あき)

(フランス)

ビジネス短信 b1b61052873729b0