大規模列車事故で国内鉄道網システム改善を迅速化へ

(ギリシャ)

ミラノ発

2023年03月24日

ギリシャのキリアコス・ミツォタキス首相は3月14日、2月末にギリシャ中部のラリサ近郊で発生した、国内過去最大規模の走行中の旅客列車と貨物列車の正面衝突事故に関して、関係企業と会議を行った〔首相府プレスリリース(ギリシャ語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます〕。参加したのは、今回、事故を起こした列車を所有するギリシャの鉄道運行会社ヘレニック・トレイン(注)、国内の鉄道網と鉄道インフラを所有するギリシャ国鉄(OSE)、OSEの子会社で鉄道関連プロジェクトを進める企業ERGOSEの代表者。会議では、追加の安全対策を施した鉄道の運行再開や、ギリシャにおける鉄道の信号遠隔制御システムに関するプロジェクトの期限順守などについて話し合われた。

ギリシャでは、鉄道路線の安全性向上のため、アテネ~テッサロニキ~プロマホナス間の信号遠隔制御システムの再構築と改善などのプロジェクトが2014年に始動し、ERGOSEが、欧州列車制御システム(ETCS)の導入を含む国内鉄道の近代化に取り組んでいた。しばらくの間プログラム契約の履行が中断されていたが、2021年に、完成の迅速化を目的に追加契約が締結され、プロジェクト期間の延長と追加予算が投入されていた。

ミツォタキス首相は3月9日に行われた閣僚会議で、信号遠隔制御システムの導入が完了していれば、このような想像を絶する事故は避けられたと述べ、事故調査における透明性の確保と、鉄道における技術面と人的資源管理の面で問題改善を図るとした〔首相府プレスリリース(ギリシャ語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます〕。また、ミツォタキス首相は3月1日に、コスタス・カラマンリス・インフラ運輸相、OSEとERGOSEの幹部の辞任を発表するとともに、事故調査のための党派を超えた専門家委員会を直ちに設置することを表明している〔首相府プレスリリース(ギリシャ語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます〕。さらに、ミツォタキス首相は3月8日に欧州鉄道機関(ERA)、欧州委員会運輸総局などの代表と会談。EU側は、今後、ギリシャの鉄道網の運用改善、安全性の確保、インフラ投資とEU基金の活用の可能性などについて、具体的な提案を行う旨を伝えた(首相府プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

各報道によると、今回の大惨事の57人の犠牲者のうち、大多数が若年層だったため、国内で大きな社会的反響を呼び起こした。事故発生翌日の3月1日以降、国内の各種労働組合などによるストライキや抗議集会が続いた。

なお、事故以来、ヘレニック・トレインは鉄道の運行を停止しているが、暫定的に就任したゲオルギオス・ゲラペトリティス・インフラ運輸相は、3月14日、十分な点検や安全性を確保した上で、3月22日以降、段階的に鉄道の運行を再開する見通しと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

(注)ヘレニック・トレインは、イタリアの鉄道会社フェロビエデッロスタート(FS、旧イタリア国鉄)のグループ企業。

(井上友里)

(ギリシャ)

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