タイ中銀の1月経済金融報告、国内消費は堅調も輸出の弱まりが懸念材料
(タイ)
バンコク発
2023年03月15日
タイ中央銀行(BOT)は2月28日、1月の月例経済金融報告を発表した。タイ経済は政府の景気刺激策もあり民間消費指数が増加し、前月から改善していると評価した。また、外国人観光客数がやや鈍化する一方で、国内旅行者数の増加からサービス消費は改善した。
工業生産指数は、前年同月比4.4%減で、前月比(注)では0.8%増となった。メンテナンスにより停止していた製油所の再開から、石油製品が増加した。また、天候に恵まれパーム油の生産が増加し、食料生産の増加に寄与した。一方で、コンクリートやセメントの生産が低調だったことから、建設資材の生産は減少した。
需要面については、民間消費指数が前年同月比4.1%増、前月比0.5%増となった。政府による景気刺激策と消費者心理の改善が要因。民間投資指数は前年同月比1.5%減、前月比は1.8%増となった。機械設備投資は前年同月比、前月比ともに増加した。輸出は前年同月比で3.4%減となった。
1月の外国人観光客数は214万4,900人と前月より4.3%減少した。インドからの旅行者の減少が要因で、同国でタイからの帰国時にPCR検査が義務付けられたことが影響した。一方で、1月8日以降、ゼロコロナ政策を解除した中国からの旅行者数は顕著に増加しており、マレーシアや欧州といった他の国・地域からの旅行者数も増加している。
予想よりも早くゼロコロナ政策を解除した中国からの観光客数の増加も相まって、2023年はさらなる外国人観光客数の増加による経済成長が期待される。一方で、世界需要の弱まりを懸念する声もあり、大手格付け会社の調査部門フィッチ・ソリューションズは、2023年のGDP成長率予測を3.6%から今後、下方修正する可能性が高いとしており、輸出需要の弱さが想像以上に深刻とみている(「バンコク・ポスト」紙2月23日)。ただし、好材料として観光業の回復に加え、5月に予定される総選挙関連支出の増加と中国向け輸出の増加が見込まれることから、2022年のGDP成長率を上回ると予測している。
(注)前月比は季節調整済みの数値。
(藤田豊)
(タイ)
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