欧州産業連盟、EUの外国補助金規制の運用案に提言、過度な通知義務を懸念
(EU)
ブリュッセル発
2023年03月09日
ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は3月7日、EU域内市場に歪曲(わいきょく)的な効果を及ぼす外国補助金(域外国政府による資金的貢献)に対処する規則の詳細を定める実施規則案に関する政策提言書を公表した(プレスリリース
)。外国補助金に関する規則は、欧州議会およびEU理事会(閣僚理事会)が2022年に最終承認し(2022年12月9日記事参照)、2023年1月12日に発効した。欧州委は2月に、企業の合併・買収や公共調達に関連する通知様式などを盛り込んだ実施規則案
を発表、パブリックコンサルテーション(公開諮問)を2月6日~3月6日に実施しており、規則が適用開始となる7月12日より前に採択することを目指している。
ビジネスヨーロッパは、EU域内では加盟国政府の補助金については明確なルールを定めながらも、これまで域外国の補助金に対処する手段がなかったが、新規則はこうした規制の内外差を是正し、域内市場における公正な競争環境が再び確保されたと歓迎した。また、適用にあたっては、域内市場の歪曲につながる外国補助金を規制しながら、企業や加盟国当局にかかる負担は最小限にとどめるという「適正な水準かつ効果的な運用」を求めた。しかし、実施規則案で示された様式は「企業の経営慣行を無視し、既存の制度を活用するのではなく、5~10年間に1回といった低い頻度で必要となる手続きについて、新たに専用の報告手段を準備することを求めるものだ」と不満を示した。
例えば、実施規則案においても、企業にとっては外国補助金の定義が明確になっておらず、特に公共調達への入札に関連して、欧州委に通知すべき情報の詳細について非常に曖昧であることや、通知の対象となる外国補助金を受けていない企業に対しても、その企業が受けた全ての外国補助金の一覧を添付した宣誓書を入札に参加するにあたって提出することを求めるなど、企業の負担が多いことを問題点として指摘した。ビジネスヨーロッパは、企業から情報の提出を受ける欧州委側も膨大な情報処理をする必要が生じ、域内市場の歪曲につながる外国補助金を見分けることが困難になる恐れがあるとした。
そこで、実施規則では、外国補助金の種類によって、または一定の金額以下であれば、欧州委への通知文書や宣誓書の記載対象から除外するなど、記載すべき事項を減らすことや、欧州委に通知する情報の内容を定めるにあたって、企業内における報告作業の運用体制や、企業や加盟国政府がすぐに入手できるデータの種類などを考慮することを提案した。
(滝澤祥子)
(EU)
ビジネス短信 99f7ee46441819dc