米税関、対ロ制裁対象のアルミ製品の輸入に義務付ける精錬・鋳造国の申告開始を5月10日に延期

(米国、ロシア)

ニューヨーク発

2023年03月31日

米国税関・国境警備局(CBP)は3月30日、ロシアへの制裁の一環で同国原産のアルミニウム製品の関税を引き上げることに伴い、対象製品を輸入する場合に義務付ける精錬・鋳造国の申告の開始日を、当初の4月10日から5月10日に延期すると公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

ロシア原産のアルミ製品に対する関税の引き上げは、ジョー・バイデン大統領が2月24日に公表した大統領布告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに基づく措置で、1962年通商拡大法232条を根拠に、(a)ロシア原産のアルミ製品および派生品の一部につき3月10日以降、関税率を200%に引き上げるほか、(b)4月10日以降はロシアで精錬・鋳造されたアルミ1次品(注1)を使用しているアルミ製品および派生品の一部に対しても関税率を200%に引き上げる内容となっている(2023年2月27日記事参照)。CBPは3月10日付のガイダンスで、上記(b)についてロシアで精錬・鋳造されたアルミ1次品を含むか否かを判定するために、米国に輸入される該当品目について原産国を問わず全て、製品に含まれるアルミ1次品が精錬・鋳造された国を申告するよう4月10日から義務付けると公表していた(2023年3月13日記事参照)。制裁対象(注2)には、自動車用バンパーおよび部分品(関税分類番号:8708.10.30)なども含まれており、ロシアがそれらの製造サプライチェーンに全く関与していない場合でも、その立証のために精錬・鋳造国の申告をすべからく義務付けられるため、輸入手続きのコスト増になるとみられていた。

この精錬・鋳造国の申告の義務付けについて、今回のガイダンスは開始日を5月10日に延期すると明らかにした。一方で、ロシアで精錬・鋳造されたアルミ1次品を使用しているアルミ製品および派生品の一部に対する関税は予定どおり、4月10日から200%に引き上げる。CBPは申告の義務付けを延期した理由について明示していないが、「延期により、貿易関係者は新たな申告義務を順守するために、ソフトウエアやシステムをアップデートするための追加的時間を確保できる」としており、産業界から時間的猶予を求める声などがあったとみられる。

(注1)ホール・エルー法により、アルミナから電解精錬された新たなアルミニウムと定義されている。

(注2)制裁対象となるアルミ製品および派生品の関税分類番号(HTSコード)は、以下のとおり。詳細は3月10日付のCBPのガイダンス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

  • アルミ製品:7601、7604、7605、7606、7607、7608、7609および7616.99.51
  • アルミ派生品:7614.10.50、7614.90.20、7614.90.40、7614.90.50、8708.10.30および8708.29.21

(磯部真一)

(米国、ロシア)

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