科学における女性デーに合わせSTEM分野への復職支援開始を発表
(英国)
ロンドン発
2023年03月01日
英国のケミ・バデノック・ビジネス・通商相兼女性平等担当相は2月11日、科学における女性と女児の国際デーに合わせ、科学・技術・工学・数学(STEM)の分野での職場復帰支援スキームの開始を発表した。
同スキームでは、政府は15万ポンド(約2,430万円、1ポンド=約162円)の資金を投じ、北部イングランドおよび中部ミッドランズでの復職支援を行う。これらの地域は、ロンドンなどを含む南部に比べ、復職支援プログラムが少ないとされている。同スキームはSTEM分野の雇用・就職を支援するSTEMリターナーズと、女性の復職を支援するウィメンリターナーズが18カ月間のパイロット事業として実施。キャリアコーチングや職業スキル訓練などを通じ、子育てや介護などで職場を1年以上離れていた者の復帰を支援する。
英国で同分野に従事する労働者のうち、女性が占める割合は29.4%(2020年時点)にとどまっている。STEM分野では現在7万5,000人にのぼる復職希望者がおり、そのうち大半が女性とされている。
同相は、STEM分野を学ぶ女性が増加している一方、家族の世話のために仕事から離れてしまう女性が多いことを踏まえ、「職場の平等性の向上と経済活性化のために復職者に投資する」と述べた。
ウィメンリターナーズは、スコットランド自治政府からも資金提供を受け、同地域向けの女性の職場復帰支援プログラムを実施している。2022年初期の成果につき、同団体のジュリアン・マイルス最高経営責任者は、休職中の女性84人にコーチングなどの支援を実施したところ、全員の復職準備に大きな進展が見られ、約3分の1が雇用契約まで進んだと述べた(「ウィメンズインステム」2022年5月13日)。
なお、EU統計局(ユーロスタット)によれば、技術者・科学者に占める女性の割合はリトアニア、ブルガリア、ラトビア、ポルトガルなどで50%を超えている(2021年時点)(注)。
STEM分野の復職支援に取り組む企業も
女性に限定した取り組みではないものの、STEM分野での人材不足を解消すべく、復職支援を行う企業もある。業界団体テックUKは、復職プログラムを有する企業のリストを公開しているほか、保険大手ロイズもテクノロジー分野を含む復職者の支援プログラムを進めている。
(注)英国政府の発表はSTEM分野の労働者、ユーロスタットは技術者・科学者と、定義が異なる。
(増井薫乃、山田恭之)
(英国)
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